大気汚染物質が国境を越えて移動し、遠く離れた場所で大気汚染を引き起こすことを越境大気汚染と言う。欧州では1960年代から中欧の工業地帯から北欧に移動した大気汚染物質による酸性雨が問題となっている。また、北米でも酸性雨は米国とカナダの間で国際問題となっている。
アジアでも、経済発展に伴い火力発電所・工場・自動車等による化石燃料の燃焼、農業での焼き畑などの発生源から、窒素酸化物(NOx) や硫黄酸化物(SOx) をはじめ多様な大気汚染物質が大量に発生し、これらが越境して汚染を広げるようになっている。越境大気汚染物質が一因と考えられる酸性雨や光化学スモッグ(オキシダント)が、日本でも発生することがある(※1)。近年では西風にのって運ばれる微小粒子状浮遊物によって、国内のPM2.5濃度が上昇することで健康被害を生じるとの懸念が強まっている。
越境大気汚染に関する国際条約としては、欧州諸国及び米国、カナダなどが加盟する「長距離越境大気汚染条約」(※2)がある。酸性雨などの越境大気汚染の防止対策の義務、汚染状況の調査、国際協力の実施などが定められている。アジア地域では「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」(※3)が1998年からの試行稼働を経て、2001年から本格稼働し参加国間での酸性雨問題に関する協力を推進している。
(※1)独立行政法人国立環境研究所「越境大気汚染の日本への影響」
(※2)Convention on Long-range Transboundary Air Pollution
(※3)東アジア酸性雨モニタリングネットワーク
(2013年2月27日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日