洋上風力発電は、洋上、すなわち海の上で風力による発電を行うもので、大別して二つの方式がある(図表1)。一つは「着床式(着底式)」と呼ばれるもので、海底に直接設置する方式である。もう一つは「浮体式」と呼ばれ、鎖などを使って着床式よりも深い海底に固定する方式である。コストの面からは、水深50m程度までなら着床式、それ以上深い場合は浮体式の方が良いといわれている。
従来の陸上風力発電と比べると、以下のような利点と課題がある。
[利点]
・風況(風速や風の向きなど)の良いところが多い
・都市部などエネルギー消費の多い地域のそばにも風況の良いところがある
・景観や騒音などの影響が小さい
・規模の経済がきく、大型化・ウインドファーム化が可能
[課題]
・基礎工事、送電線敷設などの設置コストや、メンテナンスコストがかかる
・塩害対策、遠隔監視などの高度な技術が必要
・漁業従事者との合意形成が必要
ドイツやスペインなどを筆頭に、欧州では陸上風力発電の導入が進んでいるが、適地が少なくなってきたため、最近では洋上風力発電の導入も推進している。中でも力を入れているのが英国やデンマークである。例えば英国では、2011年末時点で風力発電全体の設備容量が6,540MWあるが、そのうち洋上風力発電は2,094MWと約3割を占めている(※1)。欧州は遠浅の海岸が多いため、着床式の風力発電の導入が進んでおり、浮体式はノルウェーやポルトガルなどが実験中である。
日本では、山形県、茨城県、北海道の3地域で合計25MW(※2)の着床式の洋上風力発電が稼働している(2013年1月時点)(※3)。周囲を海に囲まれている日本には世界6位の広さのEEZ(排他的経済水域)があるが、着床式に向く浅瀬は少ない。
そこで日本では、浮体式洋上風力発電の実証実験を進めて、海外勢に先行しようとしている(図表2)。
(※1)GWEC “Global Wind Report Annual market update 2011”
(※2)2013年3月からは、茨城県で16MWが稼働予定。
(※3)サミットウインドパワー株式会社、株式会社 小松﨑都市開発、北海道久遠郡せたな町の公開資料を合計した。
(2013年1月30日掲載)
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