ウォーターフットプリント

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2012年11月30日

  • 岡野 武志

生産物のライフサイクルを通じて使用される水の量を定量的に把握する考え方で、原材料や生産過程などに関わる水の使用量を足し合わせ、最終的な生産物に必要な水の量を算出する場合が多い。水使用量の定量的な把握という点では、バーチャル・ウォーター(仮想水)と近い概念といえるが、バーチャル・ウォーターが、国や地域間の水の仮想的な輸出入に焦点をあてているのに対し、ウォーターフットプリントは、生産物単位の水使用量に注目している点に特徴がある。


ウォーターフットプリントについては、オランダで設立された非営利組織であるウォーターフットプリントネットワーク(WFN)(※1)が広く知られている。同組織のWEBサイトでは、世界の水の状況や生産物ごとのウォーターフットプリントなども表示されており、日常生活に関する質問に回答することで、自身の生活のウォーターフットプリントを計算できる機能(Water footprint calculator)も用意されている。因みに、WFNの推計によれば、牛肉1㎏のウォーターフットプリントは、15,400ℓとされている。


ウォーターフットプリントをライフサイクルで捉える考え方は、原材料や生産過程だけでなく、その生産物が使用される時や廃棄される時の水使用量にまで広げることができる。製品使用時の水使用量を考慮すると、洗濯機や水洗トイレなど、水を使用することを前提とする製品では、水使用量を節約する設計が重要になる。また、食品や化粧品などでも、ロスの発生や洗浄の必要を少なくすれば、水使用量の減少につながるであろう。


ライフサイクルにおける使用量を定量的に把握する取り組みとしては、カーボンフットプリント(CFP)が挙げられる。しかし、二酸化炭素の場合には、地球上のどこで排出されても、地球環境への影響は同様と考えられるが、水については使用される場所によって、環境への影響が大きく異なる。そのため、清浄な水が潤沢に得られる地域や水ストレスの高い地域など、水が使用される場所の特性を考慮して、環境影響を評価する視点を盛り込むことも必要になる。


水使用量を定量的に捉える際には、その計算に適用するルールについての共通認識が必要になるため、ウォーターフットプリントの国際標準化の動きが進められている。WFNからは、“The water footprint assessment manual: Setting the global standard(※2)”が示されており、国際標準として提唱されている。一方、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)でも、既に国際標準化することが決められており、ISO14046として2014年に発行が予定されている。ISOの標準では、ライフサイクルに製品使用時の水使用量を含めることや製品のライフサイクルを通じた環境影響も対象とする点などに特徴があるとされている。


(※1)The Water Footprint Network

(※2)“The water footprint assessment manual : Setting the global standard” WFN



(2012年11月30日掲載)

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