食料を輸入している国について、仮にその輸入分の食料を国内で生産する場合に必要になると推定される水の量は、バーチャル・ウォーター(virtual water:仮想水)と呼ばれている。ロンドン大学のアンソニー・アラン氏が提唱した概念とされており、食料を輸出入することは、仮想的に水を輸出入していることに等しいと考えられている。食料の輸出入は、仮想水貿易(virtual water trade)とも呼ばれている。
環境省では仮想水計算機を公開しており(※1)、その計算によれば牛肉1㎏では20,600リットル、豚肉1㎏では5,900リットルのバーチャル・ウォーターを輸入していることになるという。日本のバーチャル・ウォーターは、国内の年間水使用量と同程度になるとの試算も紹介されている。もっとも、農業用水の使用量には、蒸発や浸透、再利用や洗浄等での利用など、さまざまな要素を考慮する必要があり、実際の使用量を正確に把握することは難しい。また、農産物生産の技術や工程などは、国や地域によって多様であり、一律に比較することは難しいと考えられるが、これらの試算は一定の目安となるであろう。
2011年度の日本の総合食料自給率は、熱供給量ベースで39%、生産額ベースで66%とされており(※2)、日本は先進各国の中でも比率が低いグループに位置する。また、これらの数値はいずれも緩やかな低下傾向にあり、国内で消費する食料を海外に依存する割合は次第に高まっている。一方、人口増加や地球温暖化などにより、世界的な水不足の深刻化が懸念されており、水や食料に関わる問題が拡大していく可能性もある。

日本には、年間約6,400億m3の降水量があり、生産活動や日常生活に使用されているのはその1/8程度と推計されている(※3)。また、全国の水使用量は、水の循環利用拡大や農地の縮小などにより、1990年代前半頃から緩やかに減少が続いている。そのため、国内で水に関する問題を喫緊の課題と捉えることは難しいかもしれないが、国際化が進み海外生産や輸入量が拡大する中で、海外での水不足が深刻になれば、日本も無関係ではいられないであろう。
(※1)「virtual water」環境省
(※2)「食料需給表」農林水産省
(※3)「日本の水資源の現状・課題」国土交通省
(2012年10月31日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

