2012年11月09日
サマリー
2012年10月、CDP(Carbon Disclosure Project)から「CDP ジャパン500 気候変動レポート2012」が公表された。CDPは、世界各国の機関投資家によるイニシアチブで、企業の気候変動問題への取り組みや、温室効果ガスの排出量の測定や管理などについて広範な調査を行い、その結果を公表している。CDPの署名機関は年々増加しており、2012年の署名機関数は655、運用資産総額は78兆ドルに達している(同レポート)。世界の主要な運用マネジャーや年金基金などが数多く署名しているCDPへの情報開示は、世界の機関投資家への情報開示として大きな意味を持つと考えられる。
CDPによる調査対象企業は、FTSE Global Equity Index Series を構成する大手企業500社(グローバル500)をはじめ、各地域の大手企業や各産業セクターの代表企業などに年々拡大している。直近では、4,000社を超える企業から回答を得ており、その回答をもとに企業の気候変動問題への対応をディスクロージャースコアとパフォーマンススコアの2種のスコアで評価している。日本企業については、500社を対象に調査が行われ、ジャパン500として結果が公表されており、2012年は233社からの回答をもとにレポートがまとめられている。
図表1が、日本企業を対象とした調査(ジャパン500)と世界の大手企業を対象とした調査(グローバル500)の平均ディスクロージャースコアである。ディスクロージャースコアは、CDPからの質問書に対する企業の回答内容の充実度を評価するもので、最大を100点としてスコアリングされている。このスコアについては、内部情報管理や事業に関連する気候変動問題に対する理解の深いことが高評価につながるとされている。2012年のジャパン500の平均ディスクロージャースコア(図表中の総合)は、67点で、2011年の平均61点よりも上がった。しかし、グローバル500の平均は76点であり、日本企業の平均スコアは相対的に低い状況にある。ディスクロージャースコアの内訳をみると、ジャパン500のスコアはいずれの項目もグローバル500よりも低いのであるが、特に「検証/ステークホルダーエンゲージメント」がグローバル500は65点であるのに対し、ジャパン500は41点と低い。CDPは、企業が開示したデータの信頼性確保のために、温室効果ガス排出量の外部検証を求めているが、日本企業の回答では外部検証を実施していない企業や、CDPが認めている検証基準を満たしていない検証などがあり、これがスコアの低いことにつながったとしている。
図表1 2012年のジャパン500とグローバル500の平均ディスクロージャースコア

(出所)CDPより大和総研作成
次に、図表2がジャパン500とグローバル500の平均パフォーマンススコアである。パフォーマンススコアは、気候変動の抑制に寄与する活動など、気候変動問題に対して望ましい対策をとっているかを評価したもので、その根拠となる十分な情報開示を必要とするためにディスクロージャースコアが50点以上の企業を対象としてスコアリングされている。パフォーマンススコアの内訳をみると、ジャパン500はグローバル500よりも平均スコアが低い項目が多い。また、ディスクロージャースコアと同様に、「検証/ステークホルダーエンゲージメント」はグローバル500が55点であるのに対し、ジャパン500は26点と非常に低い評価になっている。一方、「排出量パフォーマンス」に関しては、グローバル500が47点であるのに対し、ジャパン500は50点となっており、グローバル500を上回る結果であった。これは、2011年3月以降に、多くの日本企業が電力の使用量削減に取り組んだことで、前年よりも排出量等が減少したことを反映している。
また、各企業のパフォーマンススコアは、Aを最上位として、A、A-、B、C、D、Eの6つのバンドで公表されている。ジャパン500では、2012年は6社がAまたはA-の評価を受け、これは2011年と同数であった。しかし、2012年はB評価などの割合が相対的に増えており、2011年よりもパフォーマンススコアは上昇したようである。
図表2 2012年のジャパン500とグローバル500の平均パフォーマンススコア

(出所)CDPより大和総研作成
以上のように、2012年のレポートによると、ジャパン500のディスクロージャースコアとパフォーマンススコアは前年よりも上昇しており、日本企業の気候変動問題への対応が進んでいることが示されている。しかし、グローバル500と比べるとジャパン500の平均スコアは低く、今後もさらに気候変動問題への対応を進めることや、排出量測定の信頼性を高めることが必要であろう。また、CDPの調査に対する回答率は、グローバル500は81%、欧州の300社を対象とした調査では92%であったのに対し、ジャパン500は50%以下にとどまっている。気候変動問題への取り組みとともに、その情報開示を積極的に進めることが必要なのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
気候関連開示を投資家は必要としているか?
米国気候関連開示規則廃止案を巡ってアカデミズムでも激しい論争
2026年07月14日
-
GPIFのサステナブル投資はどこに向かうのか
ESG投資の大幅削減の裏側にはGPIFが抱える根本的な課題あり
2026年07月13日
-
2026年3月期有報の人的資本開示①
既存欄と新設欄(人材戦略に関する基本方針等)の情報分散に課題
2026年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

