企業活動に伴う環境汚染の対策費用を政府が負担する国では、汚染対策費用を企業が負担する国と比較して、競争上有利に生産できることになる。このような国際競争における不公平を防ぐ目的などから、1972年5月に「環境政策の国際経済面に関するガイディング・プリンシプル」がOECD理事会勧告として採択され、汚染者支払原則が導入されている。また、1992年に開催された地球サミットでは、「環境と開発に関するリオ宣言(リオ宣言)」の第16原則として、以下のように述べられている。
(出所)環境省訳(環境省 環境基本問題懇談会(第2回)参考資料5-1(平成15年11月25日))
「汚染者」については、
(1)過去の行為により環境を汚染した者
(2)現実に環境を汚染している者
(3)特段の対応をしなければ環境を汚染することになる者
の3通りが考えられるが、上記のガイディング・プリンシプル等では、国際競争上の公平や資源の有効利用の観点から、主に(2)と(3)の汚染者を対象としているものと考えられる。しかし、日本では、それまでの公害問題等の経験から、「汚染防除費用のみならず、環境復元費用、被害者救済費用についても、基本的には汚染者が負担すべき」という考え方が、1976年に中央公害対策審議会から示されている(※1)。OECDのガイディング・プリンシプル等が主に経済学的な視点に立つのに対し、日本では法学的な視点も含め、過去の行為についての負担も求めることから、「原因者負担原則」とされることも多い。
環境基本法では、第4条で「環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われる」ことを求めている。また、第8条第1項では、「事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する」としている。さらに第37条では、公害の防止や自然の保全にかかる措置を国や地方自治体等が行った場合には、その必要を生じさせた原因者が費用を負担することを原則としている。
(※1)「平成13年版 循環白書(平成12年度循環型社会の形成の状況に関する年次報告):第2章第1節」環境省
(2012年10月31日掲載)
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