2012年07月31日
株主が株主総会の議案を提案する権利のこと。6ヶ月前から継続して、総株主の議決権の100分の1以上、または300個以上の議決権をもっている株主であれば株主提案権を行使することができる。提案する議案の内容を株主総会の招集通知に記載するには、株主総会が開催される日の8週間以上前に、取締役に対し書面で請求しなければならない。 ただし、株主の提案議案が法律上株主総会で決議するべきものでない場合には、取締役は招集通知に記載する必要はない。また、同じ内容の議案がすでに株主総会の議案としてかけられ、総会で議決権の10分の1以上の賛成を得ることなく否決された日から3年間経過していない場合は、議案の提案をすることはできない。
わが国における株主提案権の歴史は、1948年(昭和23年)に制定された証券取引法に基づく委任状勧誘規則に今の制度とは異なる株主提案権に関する規定が設けられたことに遡る。しかし、その後の法改正において株主による濫用の恐れが強いとして、これは早々に削除されてしまった。現行制度につながる株主提案権の検討は、1975年(昭和50年)の「会社法改正に関する問題点」の中でこの制度の採用の是非が問われたことから始まる。経済団体や証券・金融業界から寄せられた意見では、少数株主権として持株の数量要件を設定したり、行使時期の制限を設けたりすること、また提案できない事項等の明定が必要であるとする声が強かったようである。加えて、直截に濫用の危険性が高いので導入に反対という実務家の意見や、実益がある改正とはいえないという意見も見られた。このように株主提案導入に反対するものや、賛成であっても濫用の歯止めを掛けた上での条件付という意見もあったが、1978年(昭和53年)には「株式会社の機関に関する改正試案」が出され、大枠で現行制度と同様の株主提案権の創設が商法改正の俎上にのることとなった。ここでも、提案権が濫用されるのではないかとの危惧が表明され、導入への反対論があったが、試案よりも持株数要件を引き上げることで法案が策定され、可決・成立へと至った。濫用に一定の歯止めが設けられた株主提案権は、当初ほとんど利用されることは無かった。株主提案を受けた会社の数を見ると、1983年に1社、84年も1社 85年3社であった。86年の5社、87年9社へと増加した後、93年以降10社台が続き、最近増加したといっても30社前後に落ち着いている。また、株主提案を受ける会社は、連続して受けることが多く数年つづけて株主提案を受けている会社がある。特定の会社に連続して株主提案が出されており、ほとんどの会社にとって実質的には無関係の制度になっているといえよう。
出所:商事法務「株主総会白書」1983年版~2011年版をもとに大和総研
※ESGニュース2012年6月15日「株主提案権は適切に行使されているか?」参照
(2012年7月31日掲載)
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