2019年10月24日
サマリー
◆資本市場において、社会全体の持続可能性を考慮した投資の規模が拡大している。こうした中、まだ規模は小さいものの、経済的(金銭的)リターンの獲得と並行して社会や環境に対してポジティブなインパクトをもたらすことを目的とする「社会的インパクト投資」が近年注目度を高めている。この背景の一つには、2015年に国連において採択されたSDGs(持続可能な開発目標)において、グローバル課題の解決のためには公的部門だけでなく民間部門の資金力の活用が必要であると掲げられていることが挙げられる。
◆社会的インパクト投資が拡大するにつれ、「インパクト・ウォッシュ」のリスクを回避し、社会的インパクト投資の要件を厳密化しようとする動きが見られる。この中で、投資プロジェクトによってもたらされた社会・環境面における効果を測定する、「インパクト評価」を実施することを要件の一つとして組み込むことが提案されている。インパクト評価は資金提供者に対する説明責任を果たすためにも重要であり、インパクト評価の実施を求める動きは強まっていくとみられる。
◆日本におけるインパクト投資を巡る動きとして、2016年に成立した「公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(いわゆる、休眠預金活用法)が挙げられる。休眠預金が社会的インパクト投資を通じたより大規模な民間資金を動員するための呼び水としての役割を果たすことなどが期待される。これに加え、インパクト投資のエコシステムを形成し、資金が自律的に循環していく仕組みを作っていくことが必要だと考えられる。
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