各国上場企業の女性取締役の状況と財務パフォーマンスとの関係

『大和総研調査季報』 2018年秋季号(Vol.32)掲載

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2018年10月23日

  • 伊藤 正晴

サマリー

日本、韓国、インド、オーストラリア、米国、英国、ドイツ、フランスの8カ国の上場企業を対象に、女性取締役の動向を調べた。韓国を除く7カ国では、分析対象期間である2013年度から17年度にかけて女性取締役比率の上昇が続いている。特に、クオータ制を導入しているドイツやフランスの女性取締役比率が大きく伸びており、その効果が表れているようである。

女性取締役の選任状況とROEやROAとの関係を分析すると、企業や機関投資家などによる自主的な活動を重視しているオーストラリア、米国、英国は、両者の間に何らかの関係が存在していることを示唆する結果を得た。一方、インド、ドイツ、フランスでは、女性取締役の選任状況と財務パフォーマンスとの間には特に関係は見られなかった。さらなる分析を要するが、クオータ制を導入し、強制的に女性取締役比率を高めることは、企業経営よりも女性を選任すること自体のみが優先されてしまう可能性を示唆しよう。日本もROEやROAとの関係は見られなかったが、女性取締役比率の水準がそもそも低く、女性取締役の選任を企業価値の創造などの効果に結び付けていくには、さらに比率を高めることが必要ではないか。

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