脱炭素の次に来る課題:海洋の持続可能性

『大和総研調査季報』 2018年秋季号(Vol.32)掲載

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2018年10月23日

  • 河口 真理子

サマリー

2050年の海の中には魚よりプラスチックの方が多くなる。このような報道により、海洋プラスチックゴミに対する関心が急速に高まり、使い捨てプラスチック容器の規制やストローを見直す動きが広がっている。しかし、海洋の問題は、プラスチック問題だけにとどまらない。海洋資源の資産価値は24兆ドルとも推計され、海洋が生み出すサービスフローは、GDPでは世界7位の国と同じ規模の2.5兆ドルという試算もある。しかし、プラスチック以外にも、人間の活動によって海洋生態系と海洋資源は大きく毀損されている。特に水産資源については、需要が拡大する一方で、天然魚介類の33%は過剰利用されており、絶滅が危惧されている魚種も少なくない。また、漁業や水産加工業における奴隷労働問題も欧米では大きな社会問題として懸念されている。漁業関係者だけでなく、小売や外食業、消費者や投資家を巻き込んだ持続可能な水産業への転換が急がれる。また、プラスチックゴミの問題は単素材を紙などに代替して解決できる問題ではない。持続可能な循環型経済の構築の中でプラスチックの在り方を考えていかなければならない。水産資源とプラスチックゴミの問題は、人間と海洋との付き合い方を見直す契機でもある。

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