再生可能エネルギーを失速させるな

主力電源に育てるためのいくつかの方策

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2017年09月07日

  • 大澤 秀一

サマリー

◆国内で太陽光や風力等の再生可能エネルギーによる電気(再エネ電気)の導入が進んでいる。電力由来のCO2が削減できれば、気候変動の「パリ協定」で政府が国際約束しているCO2を含むGHG(温室効果ガス)の中期削減目標(2030年度)の達成が近づくことになる。


◆再エネ電気の導入を後押しする「固定価格買取(Feed-in Tariff = FIT)制度」の開始から約5年が経過し、再エネ電気(大規模水力を除く)の設備容量は同制度導入前から2.7倍(5,599万kW)に急増した(2017年3月時点)。


◆ところが、電力需要が伸び悩む中、急増する再エネ電気を含む供給力が近い将来、過剰になることが想定されるため、政府は発電事業者が指定電気事業者による無制限・無補償の出力制御の求めに応じることを条件に接続契約が再開できる“指定ルール”を導入した。


◆多くのエリアで指定ルールの実施が想定されるが、FIT制度による再エネ電気の買取りが抑制されるようなことになれば、電力由来のCO2の削減に必要な追加発電設備(3,603~3,815万kW)の導入にブレーキがかかる可能性がある。


◆指定ルールの実施を回避して発電設備がフル稼働する事業環境を整えるには、「30日等出力制御枠」を拡大する方法や、「優先給電ルール」を見直して再エネ電気を長期固定電源と同等に扱う方法、あるいは太陽光と風力の余剰電力を自家消費したり蓄電池を用意して一時的に退避させたりすること等が考えられる。


◆長期的な視点に立てば、電源構成の主力を炭素電源(火力)から低炭素電源にシフトさせるためには、現在の電源政策で見られるように再エネ電気を扱いにくい補助的なものとするのではなく、フル稼働することを前提とする基幹電源に位置付ける必要がある。新しい「エネルギー基本計画」において、再エネ電気がパリ協定の中期削減目標を達成するための主力電源に位置付けられるのかが注目される。

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