新しくて古い「自然資本」という考え方

『大和総研調査季報』 2015年夏季号(Vol.19)掲載

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2015年09月01日

  • 河口 真理子

サマリー

気候変動問題の激化など人類の持続可能性が危ぶまれる中、自然を「資本」として捉え、経済システムに組み込む「自然資本」の考え方が注目され始めた。またグッチを擁するケリング社のように、自社活動に起因する環境影響を貨幣換算した「環境損益計算書」を算出する企業も出てきた。この自然資本の考え方のルーツを探ると、中世以降のキリスト教においては、自然を手本に資本という考え方が生まれたことが分かる。


本稿では、そうした宗教的な背景、および18世紀以降発達する近代経済の中で、自然が外部不経済として経済システムに反映されてこなかった経緯を紹介する。そして21世紀になった現在、国際社会の中で動き始めた自然を新たな資本として経済システムに組み込もうとする試みを概観する。代表的な試算を挙げると、自然資本が生み出す生態系サービスの価値は7.25兆ドルと世界のGDPの12.5%を占め、海洋からの生態系サービスは2.5兆ドルであり、国と比較すると世界で7番目に大きい経済規模とされる。こうした自然資本の考え方を基に徹底的な省エネや、循環型システムなどの新たなビジネスモデルも増えている。自然資本の考え方は現在の経済システムを持続可能な経済に変革させる重要なツールになると期待される。


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