2015年09月01日
サマリー
気候変動問題の激化など人類の持続可能性が危ぶまれる中、自然を「資本」として捉え、経済システムに組み込む「自然資本」の考え方が注目され始めた。またグッチを擁するケリング社のように、自社活動に起因する環境影響を貨幣換算した「環境損益計算書」を算出する企業も出てきた。この自然資本の考え方のルーツを探ると、中世以降のキリスト教においては、自然を手本に資本という考え方が生まれたことが分かる。
本稿では、そうした宗教的な背景、および18世紀以降発達する近代経済の中で、自然が外部不経済として経済システムに反映されてこなかった経緯を紹介する。そして21世紀になった現在、国際社会の中で動き始めた自然を新たな資本として経済システムに組み込もうとする試みを概観する。代表的な試算を挙げると、自然資本が生み出す生態系サービスの価値は7.25兆ドルと世界のGDPの12.5%を占め、海洋からの生態系サービスは2.5兆ドルであり、国と比較すると世界で7番目に大きい経済規模とされる。こうした自然資本の考え方を基に徹底的な省エネや、循環型システムなどの新たなビジネスモデルも増えている。自然資本の考え方は現在の経済システムを持続可能な経済に変革させる重要なツールになると期待される。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
スチュワードシップとESGは別モノ:英FRC
英国でスチュワードシップの定義を変更、ESG要素を削除
2025年06月13日
-
ISSBがIFRS S2の改正案を公表
温室効果ガス排出量の測定・開示に関する要件を一部緩和
2025年05月16日
-
年金基金のESG投資を実質禁止へ:米労働省
バイデン政権時代に制定されたESG投資促進の規則は廃止へ
2025年05月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日