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水循環に関する基本法の施行

2014年07月14日

調査本部 主席研究員 兼 社会連携担当 岡野 武志

サマリー

平成26年3月27日に成立した「水循環基本法(※1)」が、7月1日から施行された(※2)。「水循環」は、「水が、蒸発、降下、流下又は浸透により、海域等に至る過程で、地表水又は地下水として河川の流域を中心に循環することをいう」と定義されており、この法律は、「水循環に関する施策を総合的かつ一体的に推進し、もって健全な水循環を維持し、又は回復させ、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与すること」を目的としている。ここでいう「健全な水循環」とは、「人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環をいう」とされている。この法律には前文が置かれており、基本的な考え方が示されている。

図表1:水循環基本法の前文

前文にいう基本理念としては、以下の5項目が掲げられている。また、基本的な施策として、「貯留・涵養機能の維持及び向上」、「水の適正かつ有効な利用の促進等」、「流域連携の推進等」「健全な水循環に関する教育の推進等」などが挙げられている。

図表2:水循環基本法の基本理念

従前の水に関わる行政については、河川や水資源が国土交通省、上水道は厚生労働省、水質等については環境省など、水の所管が多省庁にわたり、外部から一体感が見えにくいことなども指摘されてきた。この法律では、水循環に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣総理大臣を本部長とする水循環政策本部を置き、水循環に関する基本的な計画(水循環基本計画)を策定することを定めている。水循環基本計画は、基本的な方針や、水循環に関する施策に関して総合的かつ計画的に講ずべき施策などを定め、概ね5年ごとに見直されることになっている。


基本的な施策の一つに挙げられた「流域連携の推進等」については、「流域の管理に関する施策に地域の住民の意見が反映されるように、必要な施策を講ずる」こととされている。健全な水循環を維持・回復させるためには、山や森、水田などを含めた流域全体の連携と協力が重要であり、これまでも各地で様々な取り組みが進められてきた(※3)。もとより水系は、農林業や水産業だけでなく、人の往来や物の流通にも幅広く活用されていた時期があり、水系を中心に独自の文化や伝統が育まれてきた地域もある。水循環基本法の施行を契機として、水資源の確保や水利権の調整にとどまらず、流域全体の産業活性化や広域の観光振興などを含め、ヒト・モノ・カネ・情報などの循環が再び促されることが期待される。


一方、この法律が成立した背景には、外国資本による森林買収の拡大に伴う、水資源確保に対する懸念や不安に歯止めをかける狙いがあったとの見方もある。林野庁の調査(※4)によれば、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例は、平成25年1月から12月までの期間に14件あり、取得された森林面積は194haとされている。また、平成18年から25年までの期間では、森林買収の件数は79件、取得された森林面積は980haに上るという。水循環の定義に「地下水」が含まれ、基本理念で「水が国民共有の貴重な財産」であるとした背景には、そのような懸念や不安があるのかもしれない。


他方でこの法律の前文では、「水が人類共通の財産であることを再認識」することにも触れており、気候変動が水循環を変化させていることや、清浄な水にアクセスすることが難しい人々が少なくないことなども配慮されているものと思われる。近年では、集中豪雨や少雨、大型の台風や竜巻など、世界各地でかつてより極端な現象が発生しているようにみえる。気象庁によれば、1時間に50㎜以上の雨(非常に激しい雨)や80㎜以上の雨(猛烈な雨)を観測する頻度は高まっており、1日あたりでみても、400㎜以上の年間観測回数には増加傾向が明瞭に表れているという(※5)。健全な水循環の維持・回復に向けては、地球規模の視野で、国際的な連携や協力を進めることがさらに重要になっているといえよう(※6)


(※1)「議案情報(水循環基本法)」参議院
(※2)「『水循環基本法の施行期日を定める政令』について」国土交通省(報道発表資料:平成26年6月20日)
(※3)「協働・連携の取組み事例」国土交通省
(※4)「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」林野庁
(※5)「気候変動監視レポート(2012)」気象庁
(※6)参考情報:ESGの広場「静かに広がる水のリスク」

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