食品廃棄物2千万トンの再生利用

RSS

2013年07月03日

  • 岡野 武志

サマリー

農林水産省では、食品産業における食品廃棄物等の発生量及び食品循環資源(※1)の再生利用等実施率を取りまとめており、先ごろ、平成23年度の取りまとめ結果が公表された(※2)。これによれば、平成23年度の食品廃棄物等の発生量は約2千万トンとなっており、前年度との比較では4.3%減少している。廃棄物として処分された量も約60万トン減少しており、再生利用等実施率(※3)は84%に上昇している。


「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)(※4)」は、食品廃棄物等を多量に発生させる食品関連事業者(※5)に対して、食品廃棄物等の発生量や再生利用等の取り組み状況を主務大臣に報告することを義務付けている。この取りまとめでは、食品リサイクル法に基づく報告結果と食品リサイクルに関する事例調査結果を用いて、食品廃棄物等の発生量と食品循環資源の再生利用等実施率を推計している。

食品廃棄物等の発生量と再生利用等の概要(千トン)
食品廃棄物等の発生量と再生利用等の概要(千トン)
注)再生利用等実施率は発生抑制量等も含めて算出するため、この表の数値とは一致しない。
出所)農林水産省資料より大和総研作成

食品関連事業者の区分ごとにみると、前年度との比較では、いずれの区分でも再生利用等実施率が上昇しており、食品廃棄物等の削減や再生利用等に向けた取り組みが各方面で着実に進められていることがうかがえる。しかし、廃棄物として処分される比率は、サプライチェーンの川下に行くに従って大きくなっており、最終消費者に食品を提供する食品小売業や外食産業では、食品の再生利用等が難しい状況もみられる。さまざまな食品が組み合わせ・加工され、調味料や添加物等が加えられ、個別に容器や包装を伴った商品は、他の用途に再生利用しにくいのかもしれない。また、顧客ニーズへの対応や商慣行などにより、多めの発注や在庫等が発生し、販売期限切れ等につながっている可能性もある。


食品リサイクル法は、食品循環資源の再生利用や熱回収等を総合的かつ計画的に推進するため、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」を定めることとしている。この基本方針には、「食品循環資源の再生利用等を実施すべき量に関する目標」も設定されることになっている。現在の基本方針は、平成19年11月に策定されており、策定から5年の見直し時期が到来しているが、法全体の見直しの検討を踏まえて、新たに基本方針が策定されるまでの間、これまでの目標を据え置くこととされている(※6)。これらの目標値と比較すると、流通過程や外食産業で発生する食品廃棄物等については、さらなる発生量の削減や有効利用が求められるといえよう。

再生利用等実施率の目標
再生利用等実施率の目標
出所)農林水産省資料より大和総研作成」

食品リサイクル法では、再生利用の用途として、「肥料、飼料その他政令で定める製品の原材料として利用すること」を想定しており、「その他政令で定める製品」は、炭化の過程を経て製造される燃料及び還元剤、油脂及び油脂製品、エタノール、メタンとなっている(※7)。食品廃棄物等の再生利用の実施状況を用途別にみると、飼料としての利用が全体のおよそ3/4を占めており、肥料への利用と合わせると全体の9割以上になる。前年度と比較すると、エタノールやメタンへの利用量に減少がみられており、再生可能エネルギーへの活用を含め、食品循環資源の特性に応じた幅広い活用に向け、一層の取り組みが期待される。

再生利用の用途別実施量(平成23年度:千トン)
再生利用の用途別実施量(平成23年度:千トン)
出所)農林水産省資料より大和総研作成
(※1)食品循環資源:食品廃棄物等のうち有用なものをいう(食品リサイクル法第2条第3項)。
(※2)「平成23年度食品廃棄物等の年間総発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率について」(平成25年6月17日:報道発表資料)農林水産省
(※3) 再生利用等実施率=(再生利用量+熱回収量×0.95+減量量+発生抑制量)/(発生量+発生抑制量)
(※4)「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」法令データ提供システム
(※5) 食品関連事業者とは、食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者、及び、飲食店業その他食事の提供を伴う事業として政令で定めるものを行う者(=沿海旅客海運業・内陸水運業・結婚式場業・旅館業)をいう。
(食品廃棄物等多量発生事業者とは、前年度の食品廃棄物等の発生量が百トン以上の食品関連事業者)
(※6)「食品廃棄物等の再生利用等の目標について」農林水産省
(※7)食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律施行令第2条

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。