2012年11月19日
サマリー
2012年の夏は、家庭でのエアコン使用を減らすために、図書館やカフェなどに集まって過ごす「クールシェア」(※1)が知られるようになった。11月1日から始まったのが、クールシェアの冬版にあたる「ウォームシェア」である(図表)。こちらはエアコンなどの暖房器具を消して、近隣の施設などに集まろうという活動である。2012年から環境省のクールビズ、ウォームビズの活動と連携している(※2)。
クールシェアは、環境省などが主催するeco japan cup 2011のエココミュニケーショングランプリを受賞した多摩美術大学デザイン学科堀内チームのアイデアである。猛暑日のピーク時間帯の家庭内の電力消費は、エアコンが半分以上を占めていることに注目した。高齢者の中には節電を意識するあまりに、室温が30℃を超えるような時間帯でもエアコンを使わずに熱中症になる例があったが、エアコンの効いた施設にいれば、その心配も減る。
また、エアコン使用が減れば光熱費を減らすことにもなるため、高齢者や小さな子どものいる家庭など外出を遠慮しがちな人々でも、施設や友人宅に集まるインセンティブになると思われる。
どこにウォームシェアスポット(施設)があるか、地図・GPSと連動して探せる「SHARE MAP」も提供されている。登録されているスポットは全国で4,010件(2012年11月16日現在)あり、日々増えている。パソコンだけでなくスマートフォンでも使えるよう利便性を高めている。
クールシェア・ウォームシェアは、活動に参加する企業にもメリットがある。単に冷暖房があるというだけでなく、クーポンや割引サービスなどの特典を提供することで集客効果を高め、地域活性化にも貢献することができるからである。ただし特典を提供しているスポットは31件(同上)と多くない。
冬期の電力不足が懸念される北海道では、「北海道発!ウォームシェア大作戦!」と題した活動も始めた。過剰な暖房に頼らず快適に過ごすためのアイデア募集や、ウォームシェアスポット・ウォームシェアイベントを利用した抽選によるグッズ提供などを行っている。
日本の家庭部門の電力消費は、第一次石油危機当時と比べると2倍以上と大幅に増加している。増加の主な原因は、世帯数の増加(単身世帯の増加)と、家電の多様化や増加(温水洗浄便座などの普及、一部屋一台のエアコン設置など)である。家庭部門に対しては、強制的に節電行動をとらせることが難しいことも背景にある。しかしクールシェア・ウォームシェアは、生活の質を落とさずにピーク時間帯の家電使用世帯数や稼働家電を減少させることができる。友人や家族との接触が増えることも期待できるため、我慢しない節電というより楽しい節電となる可能性がある。
今後は、ウォームシェアスポットという「点」をきっかけに、街全体の「面」の活動になれば、より参加企業側がメリットを感じられ、地域活性化にもつながると考えられる。また、スポット利用者の意識変化や実際の節電割合など、何らかの数値的な検証がなされると、今後の活動推進に説得力を持つことになろう。
図表 ウォームシェアのロゴ

(出所)チャレンジ25キャンペーン 「WarmBiz2012」(啓発ツール等ダウンロード)
(※1)COOL SHARE/クールシェア
(※2)環境省 報道発表資料 平成24年11月1日「2012年度ウォームビズについて(第2報)(お知らせ)」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
ボランタリー・カーボン市場(VCM)の動向と国際取引の課題
高品質クレジットの流通を支える市場・制度基盤の整備
2026年08月14日
-
SDGsの先を見据える
~企業・金融資本市場への含意~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載
2026年07月27日
最新のレポート・コラム
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
議決権行使助言業者に反トラスト法上の懸念
米国司法省が議決権行使助言業者の事業を承認した際の通知を撤回
2026年08月17日
-
中央銀行の透明性比較と熟議・説明責任の均衡点
ウォーシュ・レビューで読み解く中央銀行コミュニケーションの進化と再検討(下)
2026年08月14日
-
“Never explain, never excuse”から透明性へ
ウォーシュ・レビューで読み解く中央銀行コミュニケーションの進化と再検討(上)
2026年08月14日
-
将来の日本における金融業の強者連合とは
2026年08月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

