排出量取引マーケットレポート 2012.11.16

EUで法的拘束力を伴わない「エネルギー効率指令」が採択される

RSS

2012年11月19日

  • 大澤 秀一

サマリー

マーケットサマリー(2012/10/12~2012/11/15)

フェーズ3に向けた対策案が価格の乱高下を誘う


関連トピック

EUで法的拘束力を伴わない「エネルギー効率指令」が採択される
2012年10月4日、欧州連合理事会(閣僚理事会)は、2020年までにエネルギー効率を20%向上させる「エネルギー効率指令」を採択した。これまでのエネルギー効率関連の指令(CHP指令やエネルギーサービス指令等)や各国の国家エネルギー効率計画の実効性を担保し、2007年に採択された「気候変動・エネルギーパッケージ」で掲げられた総合的な目標 の達成をより確実にするための指令である。同指令の直接的規制効果がEU-ETSの需要を著しく減少させ、排出量価格を大きく引き下げる可能性も指摘されていたが、今回は法的拘束力がなく、必要があれば他の措置を講じることで決着したため、EU-ETSへの影響は当面、回避されたと考えられる。

我が国はCOP18に排出削減目標を明確化せずに参加
COP18に先立って行われたプレCOP(ソウル)の日本とEUの一部の国との二国間会談の場で、我が国の2020年の排出削減目標25%を維持・向上するよう要請があり、さらに同目標を国内法等へ位置づける必要性に言及する場面もあった模様である。しかしながら、現在は東日本大震災及び福島第一原発事故を踏まえ、その後に設置されたエネルギー・環境会議において作業が進められている。エネルギー政策および地球温暖化対策を含む計画・法案等の策定に向けた国内事情を考慮すれば、COP18までに排出削減目標の明確化は困難であることから、検討中であるとの姿勢を示すことに留まる模様である。代わりに、産業界からの期待も大きい「二国間オフセット・クレジット制度」の削減効果をアピールすることになるとみられている。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。