2012年10月12日
サマリー
2012年9月に公表された国税庁の「平成23年分 民間給与実態統計調査」によると、民間事業所全体の2011年の平均給与は前年比0.7%減の409万円であった。これを男女別にみると、男性の平均給与は前年比0.7%減の504万円、女性は前年比0.5%減の268万円であった。男女別の給与倍率(女性の平均給与/男性の平均給与)を算出すると0.53倍となり、女性の平均給与は男性の半分程度となっている。
平均給与の動向をみるために、1978年から2011年までの平均給与の推移を示したのが図表1である。1980年代終わりまで男性、女性ともに平均給与は上昇したが、男性の平均給与の伸びの方が大きく、男女別の給与倍率は1978年の0.52倍から、1989年には0.48倍に下がった。女性の平均給与は男性の半分以下の水準となったのである。その後のバブルの崩壊以降、1993年頃から男性、女性ともに平均給与の水準はほぼ横ばいとなり、給与倍率にも大きな変化はみられなくなった。
1998年頃から、男性の平均給与は減少し始めたのに対し、女性の平均給与はほぼ横ばいとなっている。結果、給与倍率は上昇傾向を続け、2011年には0.53倍となった。平均給与の男女間の差が縮小しているのである。これは、女性の活躍が進んだことの影響も考えられようが、業種別の平均給与の違いなどの要因もあることには注意されたい。
男女別の給与倍率の上昇が最も目立つ2009年について調べてみると、全体での平均給与の前年比は-5.5%であったのに対し、男性は-6.2%、女性は-2.9%であった。業種別では、製造業は-10.2%と大きく減少しているが、医療、福祉は-2.0%となっている。男性の業種別の人員構成比は、製造業が25.6%と最も大きく、これが平均給与の減少に大きく影響していよう。これに対し、女性は製造業の構成比が16.0%で、医療、福祉が19.5%となっており、男性に比べて平均給与の減少が抑えられている一因と考えられる。このように、男女別の給与倍率の上昇には、業種別の人員構成の違いも影響していると考えられる。
図表1 男女別の平均給与と給与倍率の推移

(注)男女別の給与倍率:女性の平均給与/男性の平均給与
(出所)国税庁「民間給与実態統計調査」より大和総研作成
次に、直近(2011年)の平均給与の状況を詳細にみるために、事業所規模別の平均給与等をまとめたのが図表2である。まず、平均給与についてみると男性は事業所規模が大きくなるほど、平均給与も高くなる傾向がみられる。これに対し、女性は事業所規模が500~999人のゾーンの平均給与が最大となっており、これよりも規模が大きい事業所の平均給与は下がっているという違いがある。結果、男女別の給与倍率は事業所規模が大きくなるほど倍率が下がる傾向があり、大企業ほど男女間の平均給与の差が大きくなっているようである。
平均年齢は男性と女性で大きな差はないが、平均勤続年数は男女間で様相が大きく異なっている。事業所規模が30人以上のゾーンをみると、男性は事業所の規模が大きいほど平均勤続年数が長いのに対し、女性は事業所の規模に関わらず、平均勤続年数が7.7年程度で一定となっている。男性は、事業所の規模が大きいほど平均給与が高くなる傾向があるが、これは平均勤続年数の違いが影響している可能性があろう。
女性の平均勤続年数が7.7年程度で一定となっている背景には、結婚や出産・子育てなどによる退職等が依然として強く影響している可能性がある。1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され、その後も改正が重ねられるなど、法的な整備は進んでいるが、実態がついていっていないことが示唆されよう。結婚や出産・子育てと仕事の両立、社内での教育・研修や業務のポジションなど、女性が活躍できる環境の整備を一層進めていく必要があるのではないか。
図表2 2011年の事業所規模別の平均給与等の状況

(注)男女別の給与倍率:女性の平均給与/男性の平均給与
(出所)国税庁「平成23年分 民間給与実態統計調査」より大和総研作成
平均給与の動向をみるために、1978年から2011年までの平均給与の推移を示したのが図表1である。1980年代終わりまで男性、女性ともに平均給与は上昇したが、男性の平均給与の伸びの方が大きく、男女別の給与倍率は1978年の0.52倍から、1989年には0.48倍に下がった。女性の平均給与は男性の半分以下の水準となったのである。その後のバブルの崩壊以降、1993年頃から男性、女性ともに平均給与の水準はほぼ横ばいとなり、給与倍率にも大きな変化はみられなくなった。
1998年頃から、男性の平均給与は減少し始めたのに対し、女性の平均給与はほぼ横ばいとなっている。結果、給与倍率は上昇傾向を続け、2011年には0.53倍となった。平均給与の男女間の差が縮小しているのである。これは、女性の活躍が進んだことの影響も考えられようが、業種別の平均給与の違いなどの要因もあることには注意されたい。
男女別の給与倍率の上昇が最も目立つ2009年について調べてみると、全体での平均給与の前年比は-5.5%であったのに対し、男性は-6.2%、女性は-2.9%であった。業種別では、製造業は-10.2%と大きく減少しているが、医療、福祉は-2.0%となっている。男性の業種別の人員構成比は、製造業が25.6%と最も大きく、これが平均給与の減少に大きく影響していよう。これに対し、女性は製造業の構成比が16.0%で、医療、福祉が19.5%となっており、男性に比べて平均給与の減少が抑えられている一因と考えられる。このように、男女別の給与倍率の上昇には、業種別の人員構成の違いも影響していると考えられる。
図表1 男女別の平均給与と給与倍率の推移

(注)男女別の給与倍率:女性の平均給与/男性の平均給与
(出所)国税庁「民間給与実態統計調査」より大和総研作成
次に、直近(2011年)の平均給与の状況を詳細にみるために、事業所規模別の平均給与等をまとめたのが図表2である。まず、平均給与についてみると男性は事業所規模が大きくなるほど、平均給与も高くなる傾向がみられる。これに対し、女性は事業所規模が500~999人のゾーンの平均給与が最大となっており、これよりも規模が大きい事業所の平均給与は下がっているという違いがある。結果、男女別の給与倍率は事業所規模が大きくなるほど倍率が下がる傾向があり、大企業ほど男女間の平均給与の差が大きくなっているようである。
平均年齢は男性と女性で大きな差はないが、平均勤続年数は男女間で様相が大きく異なっている。事業所規模が30人以上のゾーンをみると、男性は事業所の規模が大きいほど平均勤続年数が長いのに対し、女性は事業所の規模に関わらず、平均勤続年数が7.7年程度で一定となっている。男性は、事業所の規模が大きいほど平均給与が高くなる傾向があるが、これは平均勤続年数の違いが影響している可能性があろう。
女性の平均勤続年数が7.7年程度で一定となっている背景には、結婚や出産・子育てなどによる退職等が依然として強く影響している可能性がある。1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され、その後も改正が重ねられるなど、法的な整備は進んでいるが、実態がついていっていないことが示唆されよう。結婚や出産・子育てと仕事の両立、社内での教育・研修や業務のポジションなど、女性が活躍できる環境の整備を一層進めていく必要があるのではないか。
図表2 2011年の事業所規模別の平均給与等の状況

(注)男女別の給与倍率:女性の平均給与/男性の平均給与
(出所)国税庁「平成23年分 民間給与実態統計調査」より大和総研作成
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