女性のエンパワーメントに着目した途上国支援~Case Study 株式会社ア・ダンセ~

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2012年08月16日

  • 真鍋 裕子

サマリー

◆2000年に189か国が採択した「国連ミレニアム宣言」を受け、「ミレニアム開発目標」では8つの世界共通の開発目標が掲げられている。「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」はそのうちの1つの目標であるが、家庭、職場、政治など様々なレベルで女性が発言権を持つことの意義は大きく、その推進が、教育、医療、貧困など他のミレニアム開発目標を解決に導くという指摘もある。

◆株式会社ア・ダンセは、西アフリカのブルキナファソで収穫されたシアバターから石鹸を作り日本に輸入・販売することで、現地の森林保全、女性のエンパワーメント、貧困削減、そしてエイズ対策に貢献することをミッションとして取組む社会的企業である。

◆同社は、地域住民による自立的な森林管理を目指す「住民森林管理グループ」(GGF)が収穫したシアバターを買取り、HIV/AIDSに影響を受けた女性が働く「ラキエタ・エイズ対策センター」でシアバター石鹸を製作することで、ブルキナファソの森林保全に貢献し、女性たちの自立を支えている。

◆同社代表の森重裕子氏が起業に至るきっかけは、ネパールで人身売買の現実を目の当たりにしたことにある。国際労働機関(ILO)の報告では、現在世界で2100万人の人身売買が行われており、そのうちの450万人が性的搾取と推計されている。彼らは搾取から解放された後も、HIV感染や差別を受けることが多く、厳しい現実の中で生きていかなければならない。森重氏は人身売買を未然に防ぐために「女性のエンパワーメント」の必要性を痛切に感じる。

◆同社のビジネスはまだ緒についたばかりだが、GGFやエイズ対策センターの女性達に変化の兆しはある。今後、持続可能なビジネスとして成長していくためのポイントとして、「品質維持・向上」があるが、それは女性達のエンパワーメントの成功と密接な関係があろう。さらに、社会的企業の初期段階として優良な固定客をつかむための「販売戦略」と「人材」の確保が重要なポイントとなろう。昨今注目されているプロボノの活用もまた、社会的企業が成長するための一助となる取組みとして期待したい。

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