進むメガソーラー誘致。再エネ普及に向けた地方自治体の役割

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2012年07月27日

  • 真鍋 裕子

サマリー

再生可能エネルギー特別措置法(※1)の施行により、各地方自治体が大規模太陽光発電事業者(メガソーラー)の誘致に力を入れている。今月も、広島県尾道市の浄水場跡地、大阪府の泉大津廃棄物最終処分場などを対象に事業者の公募が行われている。自治体が遊休地を提供(賃貸)し、事業計画や各種条件の優れた事業者がメガソーラー事業を実施する形式だ。自治体は、無収入であった遊休地から賃貸収入を得ることができ、さらに事業税などの税収増や地元の雇用創出に繋げることができる。事業者は、比較的安価で土地を利用できるうえ、担保設定などのリスクのない自治体所有地を利用することで事業継続のリスク軽減になるWin-Winのスキームだ。


前述のスキームに限らず、各地方自治体では、所有資産などに応じて様々な形で太陽光発電事業を支援する取り組みを進めている(図表1)。資金的・人的余力がある自治体では、自ら「(1)事業を実施」している。新潟県では、企業局が合計2MWとなる新潟東部太陽光発電所を設置、運営している(※2)。また、前述の大阪府や尾道市のように遊休資産(遊休地)を持つ自治体では、事業者に「(2)場を提供」している。岡山県では、県有地・市町村有地など21か所を公表しており、随時事業者を募集している(※3)。都市圏である神奈川県では、県有施設(県立高校、県営住宅、県立福祉施設など)の『屋根貸し』太陽光発電事業を進めており、遊休地提供の変形版と言えよう(※4)。市民参加を重視したい自治体では、県有施設の太陽光発電設置に市民出資を募るなどの検討も進められており、京都市では、今年度「市民協働発電制度」の創設が計画されている(※5)

「(3)民間遊休地と事業者のマッチング」の役割を担う自治体もある。群馬県では、随時、候補地と事業者双方を募集しており、事業者が事業プレゼンを行うマッチング会なども主催している(※6)。他方で、住宅の多い都市部では、「(4)モデルプランと住民のマッチング」が行われている。東京都では、集合住宅向けの太陽光発電事業プランを公募、54事業者による183の事業プラン(投資回収が10年以内)を公表し、マンション管理会社などを対象に導入を支援している(※7)。神奈川県は、「かながわソーラーバンクシステム」と題して72の事業プランを公表。相談窓口を設けることで住民の太陽光発電設置を支援している(※8)


そのようななか、茨城県は、鹿島港南海浜地区における洋上風力発電事業者の公募を開始した(※9)。太陽光発電事業に比べ、風力、地熱、小水力発電事業などは地域住民への理解など立地面でのハードルが高い。洋上風力では漁業従事者との相互理解が必要となることなどから、一民間企業での開発が難しい。茨城県のように県が対象区域を確保し、公募する形式が増加すれば、事業者の負担は大幅に減るだろう。各自治体には、太陽光発電誘致にとどまらず、再生可能エネルギー誘致への積極的な関与を期待したい。


図表1 自治体による太陽光発電事業の推進
図表1 自治体による太陽光発電事業の推進


(※1)正式名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」。電気事業者に対して、再生可能エネルギーによる発電電力を一定価格で一定期間買取ることを義務付ける。2012年7月1日より施行。
(※2)「新潟東部太陽光発電所に関する情報
(※3)「メガソーラー設置候補地」
(※4)「県有施設の「屋根貸し」による太陽光発電事業
(※5)「門川市長記者会見(2012年2月13日)
(※6)「大規模な太陽光発電事業マッチングについて
(※7)「集合住宅向け太陽光発電システム設置プラン
(※8)「かながわソーラーセンター
(※9)「鹿島港沖合における風力発電事業者の公募」

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