SRIファンドの投資地域別動向

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  • 伊藤 正晴

サマリー

SRI(社会的責任投資)の投資形態にはさまざまなものがあるが、その代表的なものが投資信託などのSRIファンドであろう。そこで、EurekahedgeのSRIファンド・データベース(※1)からデータの取得が可能であったファンド(※2)を対象に、投資対象地域別の動向を検討した。

図表1は、SRIファンドのファンド数と運用資産額を投資対象地域別にまとめたものである。ファンド数、運用資産額のいずれも世界全体を投資対象とするグローバルが最も多い。また、ファンド数では欧州を投資対象とするファンドも多いが、運用資産額では北米を投資対象とするファンドと同程度となっており、相対的に欧州ファンドよりも北米ファンドの方がファンドの規模が大きいようである。そして、アジアを投資対象とするファンドは、ファンド数、運用資産額ともに他の地域よりも少ないこと、2011年は北米ファンドの数と運用資産額が大きく増えていることがわかる。

時系列でファンド数と運用資産額の推移をみると、ファンド数は2009年に減少した後はほぼ横ばいであるのに対し、運用資産額は2008年に大きく減少した後は緩やかではあるが増えている。投資地域別にみると、北米のファンド1本当たりの運用資産額が増加しているようである。

図表1 SRIファンドの投資地域別構成の推移
図表1 SRIファンドの投資地域別構成の推移
(注)2011年は2011年11月末時点
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成

SRIファンドのファンド数や運用資産額の増減には、新規ファンドの設立やファンドの解散が影響していよう。そこで、ファンドの設立時点と解散時点が確認できたファンドを対象として、投資対象地域別に設立ファンドと解散ファンドの数を示したのが図表2である。まず、設立ファンド数であるが、2008年に比べて2009年以降は設立されたファンド数が少ない。また、地域別ではグローバルファンドの設立が最も多いが、2010年まではアジアファンドの設立も多かった。成長性の高いアジアへの投資が増えたようである。次に、ファンドの解散をみると2009年に解散したファンドが多い。ファンドの償還時期が到来したものもあろうが、やはりリーマン・ショックを契機とした金融危機による資金流出等で、解散に至ったファンドが多かったのではないだろうか。また、投資地域別ではグローバル、欧州、北米のいずれも同程度のファンドが解散している。2010年と2011年では、アジアファンドの解散も目立つようになった。図表1で示したように、アジアファンドは他の投資地域に比べるとファンド数が非常に少ないのであるが、運用されているファンド数に比べると特に2011年には解散したファンド数が多い。さらに、2011年は欧州ファンドの解散も多いが、欧州の財政問題の影響もあるのだろうか。

図表2 SRIファンドの設立と解散
図表2 SRIファンドの設立と解散
(出所)Eurekahedgeより大和総研作成

ファンドの運用資産額には、運用によるリターンも影響する。そこで、図表3に2007年12月末を100としたSRIファンドのリターン指数の推移を示した。参考としてMSCIの各インデックスを併記している。いずれの投資地域でも、SRIファンドのリターン指数は株式市場の動きと連動性が高い。ただ、各投資地域を比較すると、少し違いがみられる。特に、欧州は株式市場に比べると2008年の金融危機時のリターン指数の下落幅が小さく、株式市場全体よりも下方へのリスクが抑えられているようである。また、アジアはグローバルや北米と比べても、株式市場との連動性が非常に高い。そして、2009年末と直近のリターン指数の水準を比較すると、北米のみが2009年末の水準を上回っている。このリターン指数の動向の違いが、2010年や2011年に北米ファンドの解散が少ないことや、2011年の北米ファンドの運用資産額が拡大したことに影響しているのではないか。

図表3 SRIファンドのリターン指数の推移(2007年12月末=100)
図表3 SRIファンドのリターン指数の推移(2007年12月末=100)
(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成

(※1)Eurekahedgeのデータについて
「Eurekahedgeのデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge及びその関係者は情報の正確性、完全性、市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを認識し、負う必要があります。Eurekahedgeではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、専門家としての助言として解釈されるべきではありません。」

(※2)異なった通貨で資金の受け入れや評価を行うため、複数のファンドとして登録されているファンド群があるが、これらが実態はひとつのファンドである場合にはそのなかの代表ファンドのみを分析対象としている。

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