2011年12月02日
サマリー
図表1が、スコアリング対象企業を情報公開度スコアが50以上の企業(スコア上位、115社)と50未満の企業(スコア下位、96社)に区分し、リターンを算出した結果である。具体的には、スコアの開示が10月であったことから、各年の10月末時点でスコア上位とスコア下位のそれぞれの等金額ポートフォリオを作成し、翌年の10月までの1年間そのポートフォリオを保有し続けることを2011年10月までの6年間繰り返した。その結果を累積したリターン指数(図中の折れ線)とそれぞれの運用期間1年ごとのリターン(図中の縦棒)を図示している。
図表1 リターン指数と1年間リターンの動向

(出所)CDP、東京証券取引所等より大和総研作成
まず、リターン指数の動向をみると、スコア上位と下位はともに株式市場全体と同様な動きを示しているが、詳細にみると2008年半ばまではリターン指数の水準が上からスコア上位、スコア下位、配当込みTOPIXの順となっている。そして、2008年の金融危機による株式市場の大幅下落時にはスコア上位と下位の水準が入れ替わり、その後は配当込みTOPIXより上の水準でスコア上位とスコア下位がほぼ重なった状態で推移している。次に、各1年間のリターンをみると、2007年11月から2008年10月までのスコア上位は配当込みTOPIXのリターンを僅かに下回ったが、それを除くとスコア上位とスコア下位のリターンは常に配当込みTOPIXを上回っている。これらのことは、情報公開度スコアが株式リターンの動向と関連していることを示唆しているのではないか。また、リターンを計測した6年のうち3年はスコア上位がスコア下位のリターンを上回っていること、各年の1年リターンを平均するとスコア上位は-1.39%、スコア下位は-2.08%であること等から、スコアの高低もリターンと正の相関を持っている可能性がうかがえよう。
次に、直近のリターンの動向を詳細に示したのが図表2である。情報公開度スコア上位と下位のそれぞれについて、スコア開示後の月次平均リターンの平均値を配当込みTOPIXと比較すると、分析期間の12カ月でスコア上位のリターンが配当込みTOPIXを上回ったのは8回であった。また、スコア下位は9回、そしてスコア上位または下位が配当込みTOPIXを上回ったのは11回となっている。情報公開度スコアの高低に関わらず市場全体のリターンを上回った月が多い。また、1年間の累積リターンの平均値を算出すると、配当込みTOPIXが-3.54%であったのに対し、スコア上位は-3.18%、下位は-0.20%であり、いずれも配当込みTOPIXのリターンを上回っている。なお、スコア上位の累積リターンがスコア下位を下回ったのは、8月の大幅なマイナス・リターンの影響が大きい。8月は、スコア上位の2割強を占める電気機器等の株価が欧米財政問題や世界景気の減速懸念等から大幅に下落した月で、業種構成の違いの影響が大きかったようである。
図表2 情報公開度スコア開示後のリターン動向

(出所)CDP、東京証券取引所等より大和総研作成
以上の結果は、ESG要因の1つである情報公開度スコアが株式リターンの動向と関連していること、そして業種構成の違いに注意が必要であることを示唆していると考えられよう。ただし、CDPの調査はさまざまなユニバースを対象としているが、2010年調査での回答率は世界全体の企業を対象としたグローバル500が82%、欧州企業を対象としたヨーロッパ300が84%であったのに対し、ジャパン500は41%と低い。また、直近の11月に公開された「CDP ジャパン 500 レポート 2011」でも、回答率は43%にとどまっている。日本企業を対象とした調査は2006年から2008年は150社で、500社に拡大されたのが2009年からであったことが、この回答率に影響しているのかもしれない。また、2011年は東日本大震災の影響で回答を辞退するという要因もあったようだが、2010年、2011年と連続して回答率が40%強であったことは、CDPへの情報開示はまだ積極的とは言えまい。CDPの目的の中に、世界の投資家と連携し投資機会を推進することがあり、2011年のレポートによると551の機関投資家(合計運用資産額71兆ドル)の機関投資家が署名している。したがって、調査への回答は投資家への情報開示として大きな意味があろう。CDP調査への回答企業が増えることが望まれる。また、回答企業の増加でこの調査の価値が一層高まり、ESG要因としての情報公開度スコアやスコアを構成する要素と株式リターンとの関連性がより明らかになるのではないだろうか。
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