2011年11月11日
サマリー
まず、図表1が情報公開度スコアの度数分布である。CDPが調査対象としている日本企業は500社で、期限までに回答が得られた211社を対象としてスコアが付けられている。また、スコアが50未満の企業についてはスコアの数値が開示されていない。レポートではスコアが70超を高い、50から70を中程度、50未満を低いとしているが、スコアが50未満の企業が全体の45.5%と約半数を占めているのに対し、70を超えている企業は18.5%となっている。また、スコアが80を超える企業は非常に少なく、5.2%しかない。まだまだ、気候変動問題や温室効果ガス等に関する取り組みが不十分な企業が多いのではないかと思われる。ただし、スコアリングの対象となった211社はスコアの高低に関わらず情報開示に積極的な企業であり、市場全体よりも株式パフォーマンスが上回ることが期待される。
図表1 情報公開度スコアの度数分布

(出所)CDPより大和総研作成
次に、図表2が2010年末時点での33業種別の上場時価総額構成比を示したものである。情報公開度スコアが50以上の企業を「スコア上位」、50未満の企業を「スコア下位」とし、市場全体の時価総額構成比の上位10業種について掲載した。スコア上位とスコア下位を比較すると、業種構成比が大きく異なっている。市場全体と比べると、スコア上位は電気機器や輸送用機器等の輸出産業の構成比が非常に高いのに対し、スコア下位はこれら業種の構成比は市場全体の半分程度しかない。一方、スコア下位では通信業や電力・ガス業の構成比が高いのであるが、スコア上位ではこれらの構成比が低く、特に通信業の構成比は市場全体での構成比の1割程度しかない。市場の動向によってスコア上位と下位との株式パフォーマンスに差が生じることが推測される。
図表2 上場時価総額上位10業種の構成比(2010年末時点)

(出所)CDP等より大和総研作成
図表3が、スコア上位と下位の企業の平均リターンの推移である。まず、月次のリターンをみると、分析期間の14カ月でスコア上位のリターンが配当込みTOPIXを上回ったのは8回であった。また、スコア下位では10回、そしてスコア上位または下位が配当込みTOPIXを上回ったのは12回となっている。情報公開度スコアの高低に関わらず市場全体のリターンを上回った月が多い。ただし、2011年8月はスコア上位のリターンは配当込みTOPIX等に比べて大幅なマイナスとなっている。8月は、欧米財政問題や世界景気の減速懸念等から特に輸送用機器や電気機器等が大幅なマイナスリターンとなった月で、業種構成比の違いが影響したようである。そこで、この8月より前の累積リターンを算出し、図中の右に掲載した。まず、8月以前の1年間リターンは配当込みTOPIXが1.20%であったのに対し、スコア上位は3.57%、下位は2.19%であった。また、2010年のレポート発表日が不明のため、2011年のレポート発表予定(2011年11月初め)と同じとして、2010年11月からの累積リターンを計測すると、配当込みTOPIXが5.14%であったのに対し、スコア上位は7.69%、下位は6.28%となった。いずれもスコア上位、スコア下位、配当込みTOPIXの順にリターンの大きさが並んでおり、この情報公開度スコアがESG要因として有効であることの可能性を示唆しているのではないか。また、CDPの調査はさまざまなユニバースを対象としているが、その回答率は世界全体の企業を対象としたグローバル500が82%、欧州企業を対象としたヨーロッパ300が84%であったのに対し、日本500は41%と低い。日本企業の情報開示が進むことが望まれるとともに、開示が進むことでESG要因としての情報公開度スコアやスコアを構成する要素の有効性が高まるのではないだろうか。
図表3 情報公開度スコアと株式リターン(%)

(出所)CDP、東京証券取引所等より大和総研作成
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