2011年10月28日
サマリー
本プランでは、2015年に国内総生産(GDP)1万元当たりのエネルギー消費を0.869トン(標準炭換算)に引き下げる目標を掲げており、同目標値は2010年比16%、2005年比32%の改善に相当する。これにより、2011年から2015年までの5年間で合計6.7億トン(同)の省エネ効果を見込んでおり、この数値は2010年の中国のエネルギー消費量(32.5億トン)の20%に達する見通しである。目標達成のための具体的な施策として、省エネ、汚染物質の排出削減、循環型経済の主要3分野で以下のような取り組みを実施する(図表1)。
図表1 第12次5カ年計画の省エネ・環境保護関連の主要プロジェクト(抜粋)

(出所)中国中央政府公表の資料より大和総研作成
図表1で示した各分野の対応策は、それぞれ前期(第11次)の計画を踏襲しているが、中でも「循環型経済」では「都市鉱山」モデル基地の建設が新たに盛り込まれる等、政府が注力していく姿勢がうかがえる。これまで、中国の環境問題といえば省エネや大気・水質汚染、さらには気候変動対策が中心であったが、リサイクル等の循環型経済分野も現計画以降、最重要の施策の一つとして位置づけられたと言えよう。
図表2で示した通り、中国内では経済発展に伴い廃棄物の量が増加している。政府の法整備や政策等により廃棄物処理や有効利用が進められている一方で、排出量も増加を続けているため、国を挙げてリサイクルに取り組む必要がある。さらに、中国内で鉱物資源の稀少化が懸念されていることや、政府が自動車や情報通信関連等の産業を国策として育成しており、これらの産業の発展のためには各種の資源確保が不可欠となる。これらの課題に対応するため、本プランで示された施策をもとに中国内に存在する各種資源を有効活用し、リサイクル等の循環型経済を推進することが求められているのである。
図表2 中国の工業廃棄物量の推移と総合利用率(注)

(注)総合利用:企業が回収・加工・循環・交換等の方法により、廃棄物から利用可能な資源・エネルギー・園他原材料として利用可能な分を取り出す、または変換させる処理方法。
(出所)中国環境統計公報、中国統計年鑑をもとに大和総研作成
本プランでは目標達成のため、地方政府や重点企業の責任を明確にする仕組みを構築している。中央政府が各地方の経済水準や環境汚染の程度、エネルギー利用等を勘案して策定した目標値を地方別に割当て、各地方政府が達成状況を報告する義務を課している。さらに、目標達成を幹部の審査考課とリンクさせることで各地方の政府・共産党首脳が省エネ・環境対応を進めることを促している。
本プラン等の政府からの強力な規制により一定の効果が期待されるが、サービス等第三次産業の発展や都市化の進展等、中国の経済・社会の変化に対しては現行のような規制主体の政策では行き詰まりを見せる可能性もある。そのため、製造業だけでなく、住民など消費者のライフスタイルの変化を視野に入れた施策を展開できるかが注目される。具体的には日本で実施されたエコポイントや、導入にむけて中国内でも議論が進んでいる環境税等の仕組みをいかに有効に経済・社会に組み込んでいけるか等、今後も引き続き政府の施策が注目される。
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