2011年10月11日
サマリー
節電努力により、今夏の電力不足は回避された
9月9日、東京・東北電力管内における大口需要家向けの電力使用制限が解除された。今夏の供給力不足が懸念されていたが、図表1に示すとおり、東京電力では最大電力が4,922万kW(8月18日15時)となり、当初の供給力見通し5,470万kWを10%程度下回った。東北電力、関西電力についても同様に、供給力見通しを10%前後下回り、節電努力が十分な成果を上げたことがわかる。ただ、台風の影響による東北電力の水力発電所停止、設備トラブルによる関西電力の原子力・火力発電所停止等から、厳しい局面もあった。定期検査後の原発が再起動しない場合、来夏も同等の節電が求められることになりそうだ。定期検査後の原発が再起動しない場合の来夏の供給力見通しをみると、原発比率の高い関西電力では、今夏の最大電力が来夏の供給力見通しを大幅に上回っていることから、今夏以上の節電努力が必須となろう。また、北海道、四国、九州電力でも需給が逼迫することから、新たに節電要請が行われることが予想される。
(図表1)各電力会社における供給力と最大電力
(出所)2011年7月29日エネルギー・環境会議「当面のエネルギー需給安定策」、および2011年9月16日電気事業連合会会長定例会見資料より大和総研作成
当面は節電と火力発電が頼り
企業は、今後の節電要請や電力価格上昇に耐えうる体質を作る必要がある
2011年4~8月における10電力会社の総発電量は、節電の効果等により昨年比8%減少した(図表2)。電源別にみると、原子力による発電量が昨年比42%減少したのに対して、火力による発電量が昨年比13%増加した。原子力による発電量低下を、節電努力と火力発電で補っている状況だ。
今後の原子力政策も定まらず、再生可能エネルギー固定価格買取制度も来年7月施行であることを考えると、当面は節電努力と火力発電に頼らざるを得ないことは明らかだ。企業は、今夏の節電だけでなく、中長期的な省エネ・再エネ投資やエネルギー管理の徹底により、今後の節電要請や電力価格上昇に耐えうる企業体質を作ることが必要であろう。
(図表2)4~8月における発電内訳(10電力合計)
(出所)電気事業連合会受発電速報(各月)より大和総研作成
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