2011年09月09日
サマリー
マテリアル・フロー・コスト会計(Material Flow Cost Accounting:MFCA)とは、企業の製造工程等における環境負荷低減とコスト削減の両立を図るための管理会計手法として、ドイツのIMU(Institut fur Management und Umwelt)で開発されたものである。日本には2000年に紹介され、経済産業省の主導の下、調査プロジェクト等を通じ、研究開発や改良が行われてきた。MFCAの国際標準化についても日本が提案し、2008年には国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)の環境マネジメント技術委員会の中に、国際規格化を検討するワーキンググループが設立された。ワーキンググループでは、神戸大学の國部克彦教授が議長を務める等、日本が主導してMFCAの国際標準規格の検討を進め、このたび環境規格として国際標準化(ISO 14051)が決定した。
MFCAの特徴は、製造工程等で発生する廃棄物や不良品のロスを「負の製品」としてコスト認識する点にある。下図において、原材料の投入量を100、加工費を60とし、70%が正常品として加工され、30%が廃棄物や不良品として排出される工程を例に概説する。通常の管理会計によれば、工程の負のコストは廃棄物処理費用の20となる。一方、MFCAでは、廃棄物にも原材料費等を按分するため、負のコストは68と計算される。製造工程におけるロスを単に製品(正常品)転嫁するのではなく、失われた価値として把握(見える化)することで、その圧縮に向けたインセンティブとし、各工程等における様々な改善(原材料ロス等の削減)を図ることができる仕組みとして注目されている。
MFCAにより、原材料等のロスを削減して省資源化を実現すれば、資源の原材料化の過程で生ずる温暖化ガス等の抑制につなげることが期待できる。コスト削減と環境負荷低減を両立する新たな管理手法として注目されるほか、カーボンフットプリント等とのコラボレーションを通じ、消費者等に訴求することもMFCAの普及に有用と考えられる。
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