2011年06月24日
サマリー
3月11日の大震災発生により延期されていた、日本版環境金融行動原則の第五回起草委員会会合が6月13日に東京で開催された。日本版環境金融行動原則は、金融機関や機関投資家の行う投融資の社会的責任について定めた国連責任投資原則(United Nations Principles for Responsible Investment=PRI、2006年策定)を先駆例として、我が国独自の金融行動原則を示そうとするものとして、環境省などのバックアップを受け、昨年8月から民間金融機関25社の有志によって策定が進められてきた(委員長は国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問の末吉竹二郎氏)。
今回の会合では、たたき台となる原則案が修正された形で示された。修正案には、今回の大震災を受け、当該行動原則に対する起草委員会のスタンスを改めて示す「序文」が追加されている。この「序文」の追加により、本行動原則は、「序文」、「前文」、「原則(7つ)」、「ガイドライン(金融業態ごとの行動原則を示したもの)」の4つから構成されることが示された。
また、前回までの会合で議論が集中したタイトルについては、「21世紀金融行動原則(持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則)」とする案が示された。環境金融行動原則として環境分野(Environment)にフォーカスしてスタートした起草委員会も、前回会合から「サスティナブル金融」として、社会(Social)、企業統治(Governance)全体に目配りをする方向性を示した。今回の変更は、より高位の概念をタイトルに盛り込んだ形になっているが、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)などについても、ESG全体を意識したものが世界の主流になりつつある動きを受けたものと言えるだろう。
今後のスケジュールについては、今夏に開催される予定の次回起草委員会において、ガイドライン、署名方法、フォローアップ体制などについて議論したあと、初秋に行動原則案を採択する予定が示された。
日本版の行動原則全般を貫くコンセプトとしては、持続可能な社会を構築するための金融行動原則を示すと共に、できるだけ広範な金融機関などの参加が容易になるような仕組みを盛り込むことが示されている。そのためには、今回示された包括的な「序文」、「前文」、「原則」に加え、国連PRIにあるような具体的な行動例を示すなど、業態ごとの原則を示す「ガイドライン」の形式や性格も重要なポイントとなる。さらに、署名することの意味合い、各業界団体などへの働きかけのほか、国連PRIにあるような署名機関へのフォローアップ体制なども論点として挙げられた。
国連PRIについては、我が国で署名している金融機関などの数は18にとどまっている。受託者責任の問題等がクリアされないとの懸念が根強くあり、我が国の社会的責任投資については、欧州等に比べて出遅れ感が指摘されてきた。他方で、環境意識の高まりや規制強化等を受け、日本でも環境関連分野への投融資が増加傾向を辿っていることに加え、当該分野を成長戦略に取り込みたい政策側の思惑もあり、日本版環境金融行動原則において実効性を上げる方向性が打ち出されるか注目される。
今回の会合では、たたき台となる原則案が修正された形で示された。修正案には、今回の大震災を受け、当該行動原則に対する起草委員会のスタンスを改めて示す「序文」が追加されている。この「序文」の追加により、本行動原則は、「序文」、「前文」、「原則(7つ)」、「ガイドライン(金融業態ごとの行動原則を示したもの)」の4つから構成されることが示された。
また、前回までの会合で議論が集中したタイトルについては、「21世紀金融行動原則(持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則)」とする案が示された。環境金融行動原則として環境分野(Environment)にフォーカスしてスタートした起草委員会も、前回会合から「サスティナブル金融」として、社会(Social)、企業統治(Governance)全体に目配りをする方向性を示した。今回の変更は、より高位の概念をタイトルに盛り込んだ形になっているが、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)などについても、ESG全体を意識したものが世界の主流になりつつある動きを受けたものと言えるだろう。
今後のスケジュールについては、今夏に開催される予定の次回起草委員会において、ガイドライン、署名方法、フォローアップ体制などについて議論したあと、初秋に行動原則案を採択する予定が示された。
日本版の行動原則全般を貫くコンセプトとしては、持続可能な社会を構築するための金融行動原則を示すと共に、できるだけ広範な金融機関などの参加が容易になるような仕組みを盛り込むことが示されている。そのためには、今回示された包括的な「序文」、「前文」、「原則」に加え、国連PRIにあるような具体的な行動例を示すなど、業態ごとの原則を示す「ガイドライン」の形式や性格も重要なポイントとなる。さらに、署名することの意味合い、各業界団体などへの働きかけのほか、国連PRIにあるような署名機関へのフォローアップ体制なども論点として挙げられた。
国連PRIについては、我が国で署名している金融機関などの数は18にとどまっている。受託者責任の問題等がクリアされないとの懸念が根強くあり、我が国の社会的責任投資については、欧州等に比べて出遅れ感が指摘されてきた。他方で、環境意識の高まりや規制強化等を受け、日本でも環境関連分野への投融資が増加傾向を辿っていることに加え、当該分野を成長戦略に取り込みたい政策側の思惑もあり、日本版環境金融行動原則において実効性を上げる方向性が打ち出されるか注目される。
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