2011年06月22日
サマリー
2011年4月15日に予定されていた米SECによる紛争鉱物使用の開示施行が8月以降に延期された。コルタン(タンタル鉱石)、錫(すず)石、金、鉄マンガン重石(タングステン鉱石)、又はそれらの派生物が紛争鉱物として、開示の対象とされており、広範な企業への影響が見込まれる。
2010年7月に可決成立した米国金融改革・消費者保護法(ドッド=フランク・ウォール街改革および消費者保護に関する法律:Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act 2010 : H.R. 4173、以下 米国金融改革法)は、役員選任に関する株主提案の容易化や、情報開示の徹底推進など、企業のガバナンス改革に関する新制度を盛込んだ法律として、企業に対してこれまで公開されていなかった事項の開示を要求するものである。同法は、金融市場混乱の再発防止のために制定された面に焦点が当たっているが、情報開示の徹底という点では、第1502条における「紛争鉱物(Conflict Minerals)」の開示規定が広範な企業に影響する可能性がある点も見逃せない。
第1502条は、アフリカ最大の鉱物資源国で、1994年から内戦が続いているコンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo=DRC)に源泉を有するコルタン(タンタル鉱石)、錫(すず)石、金、鉄マンガン重石(タングステン鉱石)、又はそれらの派生物を「紛争鉱物(Conflict Minerals)」と定義し、「紛争鉱物」を使用する企業に対して年次報告書等における報告・開示義務を課す内容となっている。ハイテク製品メーカー、エレクトロニクス産業を中心として、これら鉱物を利用する広範な企業に重大な影響を及ぼす可能性がある。
米国金融改革法により、米国証券取引委員会(SEC)が紛争鉱物の使用に関する開示の実施ルールを整備する義務を負うこととなっているため、SECは昨年12月15日にこれら開示規則案 を公表した。当該案に拠れば、開示の大まかなアウトラインとして、(1)自社製品に「紛争鉱物」を使用している製造業者が、SECに対して報告書を提出している場合、(2)年次報告書(Form 10-K、Form 20-Fなど)において、当該鉱物がDRCおよびその隣接国の原産となっているかどうかを、(3)合理的な調査を踏まえて開示することとなっている。
米国金融改革法による開示義務は、米国SECに報告書を提出している企業であれば、外国企業にも適用される。既にSEC登録している(本邦)企業については、影響を直接受けることになるが、今回の開示規則案が企業に対して「(鉱物の)原産国に関する合理的な調査」の実施を求めていることから、SEC登録していない日本企業についても、これらSEC登録企業のサプライ・チェーンに含まれている場合には、何らかの影響が及ぶ可能性を排除できない点には注意が必要だろう。
紛争鉱物開示規則の施行に向けた具体的な動きとして、昨年末の規則案公表のあと、2011年3月上旬までパブリックコメントを募集した。また、米国金融改革法において、施行(2010年7月21日)から270日以内に最終開示規則を公表することが要請されている(1502条)ことから、4月15日までに最終開示規則が公表される見通しとなっていた。その後、4月12日に、当該規則の公表を2011年8月から12月までのいずれかの時期に延期する旨が発表されているものの(理由は付されず)、来年1月の施行が濃厚だ。
2010年7月に可決成立した米国金融改革・消費者保護法(ドッド=フランク・ウォール街改革および消費者保護に関する法律:Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act 2010 : H.R. 4173、以下 米国金融改革法)は、役員選任に関する株主提案の容易化や、情報開示の徹底推進など、企業のガバナンス改革に関する新制度を盛込んだ法律として、企業に対してこれまで公開されていなかった事項の開示を要求するものである。同法は、金融市場混乱の再発防止のために制定された面に焦点が当たっているが、情報開示の徹底という点では、第1502条における「紛争鉱物(Conflict Minerals)」の開示規定が広範な企業に影響する可能性がある点も見逃せない。
第1502条は、アフリカ最大の鉱物資源国で、1994年から内戦が続いているコンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo=DRC)に源泉を有するコルタン(タンタル鉱石)、錫(すず)石、金、鉄マンガン重石(タングステン鉱石)、又はそれらの派生物を「紛争鉱物(Conflict Minerals)」と定義し、「紛争鉱物」を使用する企業に対して年次報告書等における報告・開示義務を課す内容となっている。ハイテク製品メーカー、エレクトロニクス産業を中心として、これら鉱物を利用する広範な企業に重大な影響を及ぼす可能性がある。
米国金融改革法により、米国証券取引委員会(SEC)が紛争鉱物の使用に関する開示の実施ルールを整備する義務を負うこととなっているため、SECは昨年12月15日にこれら開示規則案 を公表した。当該案に拠れば、開示の大まかなアウトラインとして、(1)自社製品に「紛争鉱物」を使用している製造業者が、SECに対して報告書を提出している場合、(2)年次報告書(Form 10-K、Form 20-Fなど)において、当該鉱物がDRCおよびその隣接国の原産となっているかどうかを、(3)合理的な調査を踏まえて開示することとなっている。
米国金融改革法による開示義務は、米国SECに報告書を提出している企業であれば、外国企業にも適用される。既にSEC登録している(本邦)企業については、影響を直接受けることになるが、今回の開示規則案が企業に対して「(鉱物の)原産国に関する合理的な調査」の実施を求めていることから、SEC登録していない日本企業についても、これらSEC登録企業のサプライ・チェーンに含まれている場合には、何らかの影響が及ぶ可能性を排除できない点には注意が必要だろう。
紛争鉱物開示規則の施行に向けた具体的な動きとして、昨年末の規則案公表のあと、2011年3月上旬までパブリックコメントを募集した。また、米国金融改革法において、施行(2010年7月21日)から270日以内に最終開示規則を公表することが要請されている(1502条)ことから、4月15日までに最終開示規則が公表される見通しとなっていた。その後、4月12日に、当該規則の公表を2011年8月から12月までのいずれかの時期に延期する旨が発表されているものの(理由は付されず)、来年1月の施行が濃厚だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ISSBがIFRS S2の改正案を公表
温室効果ガス排出量の測定・開示に関する要件を一部緩和
2025年05月16日
-
年金基金のESG投資を実質禁止へ:米労働省
バイデン政権時代に制定されたESG投資促進の規則は廃止へ
2025年05月14日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日