サマリー
◆オーストラリアのスーパーアニュエーションは、老後の所得保障の充実を目的に1992年に創設された私的年金である。資産残高は2023年9月末で3.3兆豪ドルと、同時点におけるオーストラリア家計金融資産の約半分を占めている。被用者は強制加入とし雇用主には強制拠出を義務付けている点や、能動的に運用の意思決定を行わない加入者が長期分散投資を実践できるシステムとしてMySuper制度が機能している点などが特徴的で、制度の普及を後押ししてきたと言える。
◆しかし、近年はこうした仕組みが生み出す構造的な課題により、一部のスーパーアニュエーション加入者の退職後資産が十分に形成できない懸念が生じている。その主な課題が、加入者の転職を機に増え続けた「意図せず開設された複数の口座の保有」と「低パフォーマンスのMySuper」である。そこで政府は、意図せず開設される口座の保有を発生させない仕組みの整備や、MySuperのパフォーマンステストの実施など、これら課題への対応策を盛り込んだ年金改革法を2021年に成立させ、スーパーアニュエーション改革を進めている。すでに加入者のパフォーマンスが向上したと評価できる部分もあるが、今後は、退職後資産の増大につながるかどうか、改革の効果が注目点となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ大統領「議決権行使助言業者への規制強化」
議決権行使助言業者規制に関する大統領令を発出
2025年12月16日
-
議決権行使助言業者への依拠は共同保有認定
米国SECのウエダ委員が議決権行使助言業者規制の方向性を明らかに
2025年12月09日
-
投信運用広がるDC、時価上昇で資産額増加
元本確保型商品100%運用の加入者は2割強、分散投資の促進が課題
2025年11月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日


