サマリー
◆近年、私募REITは、年金基金や金融機関の間で注目されており、積極的な投資への機運が高まっている。この要因として、私募REITは、オープンエンド型で投資口の払戻しができるなど流動性が確保されていること、非上場であるため価格変動リスクが限定的であること、などが挙げられるだろう。
◆本稿では、いまだ商品数が少ない私募REITに対して、投資判断の基準となるガイドラインの作成を試みている。ガイドラインでは、ファンドの基本的な項目、組み入れ不動産などを4つのカテゴリーに分類し、チェックすべき項目を抽出している。また、利益相反やリファイナンスリスク低減の観点からの対策、不動産固有リスクにおける把握なども、特に重要なチェック項目として挙げた。
◆私募REITへの注目が高まっている要因としては、昨今の「アベノミクス」政策による影響もあるだろう。日銀のJ-REIT(上場REIT)買入れを通じた不動産価格の上昇期待、また、長期国債利回りの低下を通じた銀行貸出金利の低下によるリファイナンスリスクの低減など、現状の日銀の金融政策の影響により、私募REITにおいてはより安定したファンド運営が実現できる期待が高まっている。
◆私募REITの市場規模はまだ小さく、将来の姿は不透明と判断する投資家も多い。しかし、価格変動リスク、出口リスクを低減した商品であることへの期待感は強く、今後は市場が拡大する可能性もあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大和のクリプトナビ No.2 暗号資産価格のリターン・ボラティリティ・相関の特徴
過去のリターンは、将来のリターンに対する一定の予測力が存在
2025年04月15日
-
大和のクリプトナビ No.1 暗号資産価格の歴史的推移
需給の影響を受けやすく、足元では政策や機関投資家の動きも影響
2025年04月10日
-
「職場つみたてNISA」の仕組みと導入意義
ファイナンシャル・ウェルビーイングの向上も期待
2025年03月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日