高齢化と家計貯蓄率の国際比較

欧米諸国でも高齢化の影響が家計貯蓄率低下となって表れる可能性も

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2012年03月01日

  • 森 祐司

サマリー

◆家計貯蓄率の低下傾向は1990年代後半から欧米先進国に共通に見られる現象である。

◆ただし、日本以外の先進国の家計貯蓄率の低下は、住宅資産価格の上昇による資産効果の影響によって、所得・消費を拡大した結果だとみられる。このため、2008年以降の住宅資産価格の下落局面においては、消費が縮小し、家計貯蓄率は上昇する傾向も見られた。

◆日本では2000年代の住宅資産価格上昇による家計貯蓄率への影響はほとんどみられない。日本の家計貯蓄率の低下は高齢化による影響が大きいとみられる。日本は高齢化の進展が先進国の中で最も進み、家計貯蓄率への影響も顕著に表れてきているとみられるが、今後はその他先進国でも高齢化の影響が表れてくる可能性がある。

◆日本人の年金への信頼感が低いことは家計貯蓄率を押し上げる要因となるが、それでも2000年代以降に顕著に家計貯蓄率が低下してきたことは、高齢化の影響の強さをうかがわわせる。今後も高齢化は進むとみられ、家計貯蓄率低下への影響はまだしばらく続くものと予想される。

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