2012年10月03日
これまで企業は不透明な時代を生き抜いてきた。リーマンショック、東北大震災、原油高、高止まりする円高、中国経済の台頭と失速、誰がこれらを予想できただろうか。将来は誰にも予測できない。確実な未来などない。だからこそ、企業経営にはぶれないビジョンと経営方針が必要なのである。
企業は何のために存在するのか?私達は何のために仕事をするのか?生活の糧を得るためや金持ちになるためだけではない。勿論、これらは生きていく上において必要であろう。しかし企業は、そのような小さな目的では、不透明な世の中を生き抜いていけない。企業が成長していくためには、社会への貢献や人々の生活スタイルを変えるほどの大義が必要なのである。LCCのビジネスモデルとなったサウスウェスト航空はどこよりも低い運賃で活気あふれる航空輸送の提供を、マイクロソフトは未来をもっと快適で生産的にすることを、トヨタは「もっといい車づくり」による「いい町・いい社会づくり」を大義としてきた。貴方の会社の経営ビジョンは外部要因によってぶれないビジョンだろうか?従業員を突き動かす原動力となっているだろうか?
ビジョンと同様、大切なのは、具体性をもった戦略(方針)と明確な目標である。戦略は基本項目として、ある程度具体性をもたせないと、経営は一貫性をもたない。例えば、サウスウェスト航空の具体的方針は以下である。
- 二時間以内の近距離路線に徹する。
- 機材を中型機ボーイング737で統一。
- 航空機稼働率を高く維持する。ゲートターン(航空機が空港に着陸して離陸するまでの時間)を十分以内にする。
- ターゲット顧客は乗客。航空貨物は取り扱わない。
- 家族と人間を感じさせるサービス、楽しい雰囲気を維持する。
- シンプルでいく(機内サービスはしない、全席自由席、本拠地と整備工場はダラス空港のみ)、等、具体的である。
サウスウェスト航空は外部環境の変化により上記の方針に数カ所の修正を加えたものの、基本的にはこの方針を創業来維持し続けている。1978年に米国では航空規制緩和により、新路線への参入が自由化されたが、サウスウェスト航空は目先のビジネスチャンスをすぐにつかみにいかなかった。上記戦略の適合性の観点から、充分な実績調査を踏まえた上で路線を展開していったのである。
次に大切なのは具体的な戦略に裏付けられた明確な目標である。ただし、大き過ぎる目標は未達に終わる可能性が高く、現場には疲労感しか残らないので要注意である。数年後の明確な目標に向けて毎年の目標を立てよう。例えば、毎年、利益を10%上げていく。確実にできることから手をつけよう。そして、企業経営の最終的な要は、現場の個々人が強い意志で企業の未来を切り開いていくことである。
さて、貴方の会社は明確なビジョンを持ち、目標に向かって確実に進んでいるだろうか?明確なビジョンがない、具体的戦略がみえない、業績を改善するのにどこから手をつければ良いか判らないのではないか。貴方の会社が必要なのは、ターゲットに訴求するマーケティング戦略かもしれないし、経営の合理化(コスト削減)、インセンティブある人事評価制度、もしくは現場の意識改革なのかもしれない。
業績が悪い原因はなにか?何が課題なのか?あらためて第三者の目で分析してもらうと、見えなかったものがみえてくる。
課題を見つけ出すための第一歩が経営診断である。経営診断は事業環境分析、内部分析から貴方の会社の強み、弱み、脅威、機会を整理し、貴方の会社が抱える課題を抽出し解決策を導き出す。
不透明な時代に生き残るために悩み続けるより、一度診断を受ければ自社が今なすべきことが見えてくるだろう。
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