2010年06月16日
今回は少し見方を変えて、M&Aではなく連結経営において、いかにグループ価値を向上させるかを考えてみたい。
日本において「グループ経営」がまともに議論されはじめたのは、1990年代後半における連結決算重視の会計ビックバンからスタートしたと言える。現在はIFRSの適用からより強力な連結経営へ向かわなければならない。
連結経営のひとつのあり方として、強力な本社機能を持ったコア会社が、グループ各社に対して統一されたオペレーションシステムの下、業績管理を行っていくような形が考えられる。事業部制、カンパニー制、持株会社制など様々な経営形態が考えられるが、わが国の場合は、従来から親会社主導の中央集権的な経営を続けてきたため、充分に対応しきれていない会社もいまだに少なからずある。将来に向けて、どのような連結経営のスタイルをとるのかを検討していく必要があろう。
第一に、グループ企業におけるバリューチェーンを確認することから始めたい。グループ価値への貢献度が低く、将来的に価値の上昇が見込めず、シナジーも期待できない会社(事業)は、思い切って撤退や売却を検討すべきである。
次に検討すべきことは、グループを管理していく仕組み(ハード)作りである。グループ会社にはこれまで以上に自立型経営が求められるが、本社の求心力を弱めるということではない。一定の自立をしつつ、グループとしての価値観を共有するために、グループにおける求心力を維持し、管理・統制のための情報インフラの整備は不可欠である。
グループ価値向上のためには、将来ビジョンや価値観を共有化し、共通の経営指標に関する目標設定を行い、中長期的視点からのグループ運営を心掛けなければならない。そのためにはコアとなるべき企業群と、そうではない企業群とを峻別し、前者の企業群は完全にグループ内に取り込み、後者の企業群については、場合によって売却をするくらいのはっきりとした姿勢を示すことも必要である。
グループ価値の最大化のために、自立型経営をしつつ、本社の100%コントロール下におく「持株会社体制」に移行するということも、ひとつの手段であると言えよう。
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