東証上場会社のPBRの現状と金融業の戦略

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  • コーポレート・アドバイザリー部 コンサルタント 縣 賢太郎

サマリー

◆東京証券取引所(以下、東証)は、PBRが1倍を割れているなど十分な市場評価を得られていない場合にはその要因を示すように上場会社に対して通知しており、日本の上場会社のPBRに対する意識が高まってきている。

◆2023年5月末時点において、米国では約19%の会社がPBR1倍未満であるのに対して、東証プライム市場・スタンダード市場の上場会社においては約54%がPBR1倍未満の状況である。また、東証市場区分ごとの平均PBRを見てみると、直近10年で大きく数値の変動がなく、上場会社の資本市場の向き合い方に変化がなかったといえる。特に、市場規模が第二位(現スタンダード市場および旧市場第二部)の市場においては、ほとんどの期間において平均PBRが1倍を下回っている状況である。

◆東証市場区分ごと、業種ごとの平均PBRを見ていくと、業種によって数値のばらつきがあり、銀行業をはじめとする金融業は低い傾向にある。金融業各社は自社のPBRについて分析を実施しており、ROE向上を特に掲げている点が共通している。東証の通知は、PBR1倍未満かつROE8%未満の上場会社にフォーカスしており、金融業各社はPBRだけでなくROEについても意識しているものと考えられる。

◆各社においては、なぜ自社のPBRが今の値であるのかを分析のうえ、PBR向上のための施策を着実に実行していくことを期待したい。その施策の中でも、ROEの向上はPBRの向上に寄与するものであり、中長期な成長戦略を通じROEをどのように改善していくかが問われている。

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