中期経営計画の見直しは重要課題

RSS
  • 小杉 真

多くの上場企業のホームページには、経営方針として「ビジョン」や「中期経営計画」が掲載され、その目指す企業グループ像が掲げられている。おおむね「ビジョン」というと、5~10年先の「ありたい姿、目標」であり、「中期経営計画」は3年程度先を見据えての「現状を踏まえた計画」である。


中期経営計画は、外部環境予測(為替や商品市況、外部経済など)を前提とし、社内資源(人材や資金など)の最適配分を考慮して、全社的な戦略、個別の戦術とともに数値計画が策定される。また、中期経営計画には、年度予算と違って中長期的に取り組むべき課題が盛り込まれることも多い。


中期経営計画を事業環境の変化を考慮して毎年ローリングしたり、マイナーチェンジするようにスケジューリングしている企業もあるが、いったん作成した計画を計画期間の終了までそのまま(変更しないこと)にしている企業も多い。
いったん定めた中期経営計画を掲げ続け、計画達成に向けて全社一丸となって盛り立てることは、経営陣の「ブレない」方針として重要なことである。しかしながら、計画の前提としていた外部環境が大きく変化してしまった場合にはどのように対応すべきであろうか。また、計画最終期あたりになると、設定した課題が解決してしまっていたり、数値目標を達成してしまっていることもよくあることである。


一つの回答としては、状況が変わった段階で、現中期経営計画を終了(中断)して、新たに中期経営計画を策定することである。前提が変わってしまったり、達成してしまった計画を掲げ続けることは、計画達成に向けて業務に取り組む社員にとっても、その計画を参考にする投資家にとっても、あまり意味を持たないものとなってしまう。現実的には、計画策定にかける時間と労力を考えると、数値目標や行動目標のいずれかを改訂して計画期間満了まで継続できるようマイナーチェンジを施すことも有力である。


企業を巡る外部環境は、日々変化している。想定した前提が計画策定時と大きく異なったときの対応方針を立てておき、前提と現実の相違、相違による計画への影響を分析できるような作り方が必要である。現在、計画と実績に乖離がある場合には、一度策定時点に立ち返って分析してはどうだろうか。本稿をご覧の方の会社では、中期経営計画をどのように策定し、有効に運用されているだろうか。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

関連のサービス