2014年05月29日
サマリー
◆国と地方の長期債務残高はこの20年間で約3倍になった。一方これら政府部門に企業部門を加えた総債務残高の伸びは政府部門に比べれば緩やか。企業債務残高が95年度をピークに減少し、膨張する政府債務残高の「伸びしろ」を賄っていた形だ。政府部門の債務残高は99年度に企業部門を逆転。以降その差は拡大し2011年度に7割を超えた。本年度末には1000兆円の大台に乗る見込み。企業債務残高の減少も底をうった模様で、総債務残高を押し上げ、貸出原資の個人金融資産との差が狭まっている。国債の国内消化を維持するためにも財政再建が急務である。
◆経済成長の鈍化、長期金利の低下に連動するように、民間企業の事業投資利回りの傾向的低下がみられる。わが国経済の課題であり、資金が企業から政府部門にシフトした構造的要因のひとつと思われる。企業は赤字リスクが以前に比べ大きいため事業投資に慎重になる。長期投資で公営性も求められる公共インフラ整備ではなおさらである。
◆わが国の資金循環構造を俯瞰すると、全国に遍在する個人金融資産を地域金融機関が集荷し、かつてはコール資金や長期信用債券などを媒介に、再び全国に還流する構造があった。90年代以降、集荷と分荷の媒介役が国債等にシフトした。国債を媒介とした資金循環構造は資源配分の効率性や財政規律の面に課題が残る。
◆財政再建と成長戦略を両立させるためには、主に公的主体が担ってきた公共インフラの整備と資金調達を民間主体にシフトさせる必要があろう。官民連携(PPP/PFI)の流れが不可避である。官民のリスク分担の仕組みと、事業リスクを補う信用補完策の確立が必要だ。効率性や財政規律を踏まえれば資金循環構造は「地産地消型」になる。
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