2010年02月24日
前回(1月20日)のコンサルティングインサイトで、「地域経済活性化に地域金融が果たす役割」について触れ、最後に、「地域金融機関のみで、借り手に関する有用な情報生産創出にかかるコスト負担をするあるいは地域へのコミットメントを増大させ、地域の情報集積を活用し持続可能な地域経済へ貢献していくことは難しい」と結んだ。要するに、有効な情報の効率的な取得、生産、創出、及びその効果的な活用にはコストがかかり、地域金融機関のみでは負担しきれない可能性が高いということである。今回は、この論点についてもう少し踏み込むこととする。
まず、地域金融機関の収益性・健全性に悪影響を及さないように、リレーションシップ・バンキングのコスト(関係構築費)を抑える必要がある。つまり、理論的には「(貸出業務からの収益+その他業務からの収益)-(関係構築費+固定費)≧0」(※1)の式を維持することが前提となる。関係構築費は、上記の「貸出業務からの収益」と「その他の業務からの収益」の増加に繋がることが期待される。ここで、関係構築費によって金利収入のプライシング、及びクレジット費用の適正化が図れれば問題はない。しかし、実際には、関係構築費は増加し、地域金融機関の収益性、健全性に負の影響を与えることが多い。
次に、上記のリレーションシップ・バンキングのコストは、実質的には中小企業という“点”への貢献は含まれているが、地域全体あるいは面的活性への費用は含まれていない。中小企業の活性化が地域の活性化につながるケースもあるが、実際には、前回掲載したように、昨年、金融庁が公表したアンケートでも「地域全体の活性化・面的再生」、「地域活性化につながる多様なサービスの提供」に関しては、利用者の積極的な評価は3割に留まっている。(※2)これを考慮すると、面的な地域活性化のための費用は更に膨らむと推定される。
地域金融機関がイニシアチブをもって、地域を面で活性化しようとすれば、地方政府、NPO等と共に地域を活性化するという強い意志を持ち、コストを共同で負担した上で、協働のネットワークを構築することが必要となる。加えて、このネットワークを効果的に構築する社会的な素地が広がり、浸透していることが必要となる。例えば、米国では、地域金融機関が、地域社会再投資法(Community Reinvestment Act;CRA)の下、NPO、地方自治体と協働して、経済が低迷していた地域を活性化させたケースがある。米国では、地域の活性化を目的としたNPO法人(Community Development Corporation;CDC)が多く設立され、自主的に企画・運営するようになり、さらには、全米レベルのNPO・財団法人も設立されている。
このような地域活性化の主体となる機関、有効な情報の仲介機能、ネットワーク、協働の“素地”が整備されていないと、地域の効果的な活性化は難しい。日本においても、この“素地”を早急に整備できるような環境作りが必要と考えられる。
(※1) 出所:「ドイツ・リテール金融業務における自己資本比率規制とリレーションシップ・バンキングの意義」 山村延郎(金融庁金融研究センター研究官)、三田村智(金融庁金融研究センター専門研究員)
(※2)平成21年度の「地域密着型金融の取組み状況について」の地域金融機関が提供する金融サービスに関するアンケート。
(参考資料)由里宗之「地域社会と協働するコミュニティ・バンク」
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