平均利潤率の低下と政府債務の膨張の先にある官民連携(PPP/PFI)戦略の必然性
民間主体の公共インフラ整備に必要なリスク分担と信用補完策
サマリー
◆国と地方の長期債務残高はこの20年間で約3倍になった。一方これら政府部門に企業部門を加えた総債務残高の伸びは政府部門に比べれば緩やか。企業債務残高が95年度をピークに減少し、膨張する政府債務残高の「伸びしろ」を賄っていた形だ。政府部門の債務残高は99年度に企業部門を逆転。以降その差は拡大し2011年度に7割を超えた。本年度末には1000兆円の大台に乗る見込み。企業債務残高の減少も底をうった模様で、総債務残高を押し上げ、貸出原資の個人金融資産との差が狭まっている。国債の国内消化を維持するためにも財政再建が急務である。
◆経済成長の鈍化、長期金利の低下に連動するように、民間企業の事業投資利回りの傾向的低下がみられる。わが国経済の課題であり、資金が企業から政府部門にシフトした構造的要因のひとつと思われる。企業は赤字リスクが以前に比べ大きいため事業投資に慎重になる。長期投資で公営性も求められる公共インフラ整備ではなおさらである。
◆わが国の資金循環構造を俯瞰すると、全国に遍在する個人金融資産を地域金融機関が集荷し、かつてはコール資金や長期信用債券などを媒介に、再び全国に還流する構造があった。90年代以降、集荷と分荷の媒介役が国債等にシフトした。国債を媒介とした資金循環構造は資源配分の効率性や財政規律の面に課題が残る。
◆財政再建と成長戦略を両立させるためには、主に公的主体が担ってきた公共インフラの整備と資金調達を民間主体にシフトさせる必要があろう。官民連携(PPP/PFI)の流れが不可避である。官民のリスク分担の仕組みと、事業リスクを補う信用補完策の確立が必要だ。効率性や財政規律を踏まえれば資金循環構造は「地産地消型」になる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
2022年05月25日
肥大化する業務
その業務は利益に貢献しているのか
-
2022年05月24日
欧州経済見通し まとわりつく負のオーラ
ウクライナ侵攻の長期化によって、不透明さを払拭できず
-
2022年05月24日
日本経済見通し:2022年5月
経済見通しを引下げ/サービス消費等の「伸びしろ」が景気を下支え
-
2022年05月24日
中国:ゼロコロナ政策下の中国経済の行方
年後半は明確に回復も22年は4.5%程度の実質成長にとどまると予想
-
2022年05月25日
「制度」と「執行」の狭間にある闇
よく読まれているコンサルティングレポート
-
2022年03月31日
コロナ禍における消費行動の変化
購買チャネルの変化から見る消費行動の変化
-
2022年01月31日
2021年における小売業界・個人消費の動向
~新型コロナウイルスの影響に関する最新動向~
-
2015年08月12日
注目を浴びている自社株報酬と日本企業におけるその選択肢
-
2022年03月24日
株式対価M&A - 株式交付制度の戦略的活用 -
株式交付制度開始1年経過後の活用状況を踏まえて
-
2022年03月28日
上場子会社の完全子会社化の動向