2020年07月08日
サマリー
昨今の株式相場の下落による確定給付企業年金(以下、DBという)の積立金への影響が懸念される。積立金の下落は、直ちに年金給付等の支払いに支障をきたすものではないが、積立不足の拡大は財政の安定が損なわれるからだ。現状が「通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険(リスク)」であるかは別として、このようなリスクをベースにした2017年1月導入の比較的新しい財政運営の枠組みに、リスク対応掛金(※1)やリスク分担型企業年金(※2)がある。
これらは、いずれも財政悪化リスク相当額といって、「通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額」(確定給付企業年金法施行規則第43条)をベースにしている。つまり将来発生する可能性のあるリスクを見込んでDBの財政運営が行われることになる。また、リスク対応掛金やリスク分担型企業年金の枠組みを実施していない全てのDB でも、この財政悪化リスク相当額を考慮した財政運営が行われている。すなわち、DBを実施する企業にとっては、DBの企業財務への影響も大小はあるにせよ考えられ、退職給付会計においてもこのようなリスクの把握は欠かせないものと思われる。
本稿では、DBの財政悪化リスク相当額が取り扱うリスクについて確認し、その考え方や算定方法を活用して、退職給付会計において、このようなリスクを捉える場合の効果・算定方法等について考えてみる。なお、ここではリスク分担型企業年金以外のDBを対象とする。
(※1)積立金が抱える運用リスクに対応するため拠出する掛金のこと。企業が好況時に掛金を多く拠出しておくことで、不況時の運用環境の悪化による積立不足に備え、掛金拠出の引き上げを抑制し制度の安定化を図る
(※2)積立金の変動リスクや予定利率の低下リスクといった財政悪化リスク相当額を企業と従業員・受給権者で分担する企業年金。特徴は、給付を増減させることで財政均衡が図られるため、掛金が固定されること
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