2010年10月20日
最近、徐々にではあるがM&A市場が活発化しつつあるように思われる。その中で目を引くのが、会社分割と事業譲渡である。注目すべきは、いずれも会社のすべてを取り込むのではなく、その一部あるいは大部分をターゲットとしている点である。
会社の事業(営業)を売買する場合、一般には事業を遂行する上で必要となる売掛金や在庫、土地・建物などの資産のほか、顧客情報、人材、ノウハウといったものも当然に対象となる。そのような売買の際によくいわれるのが「営業権とか暖簾(のれん)を評価してほしい。」ということが少なからずある。
一般には「営業権とは、超過収益力である」といわれている。超過収益力とは、業界平均的な利益水準を上回る利益を獲得できる力を指す。
一方で、税務上はどのような扱いとなっているかというと、「営業権とは、企業が持つ好評、愛顧、信認、顧客関係その他の諸要因によって期待される将来の超過収益力を資本化した価値」であると考えられている。具体的な計算としては、超過収益力を基礎として、その10年分を営業権の価値ととらえている(財産評価基本通達165、166)。
実務的にはこのように営業権だけを評価するケースはほとんどない。あえて営業権を計算するとしたら、「営業権=事業価値総額-純資産額」というような差額計算になる。もちろん顧客だけで資産がまったく移動しないケースも考えられる。その場合は、事業価値総額がそのまま営業権の価値であるといえる。
では「事業価値」はどのように計算するかというと、一般にはDCF方式により評価がなされる。換言すれば、「DCF方式による価値-純資産額」が営業権の価値といえよう。
営業権に限らず、商標権(ブランド)、特許権、意匠権など、さまざまな無形資産の売買が活発化することも考えられる。これらの権利について、営業権の考え方の延長線上で評価が可能なのか、別の概念なのかを、本質論に立ち返ってアプローチしていくことが必要となるであろう。
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