2010年07月21日
M&Aにおいて、買い手から買収対象会社に対するデューディリジェンス(DD)といわれる「買収監査」が行われる。一般にはDDというと、財務DD、法務DD、場合によってはビジネスDD、税務DDなど広範囲に行われる。最近では環境DDなどをする場合も見られる。それらの中で重要性が増しているのが人事DDではないか。
では人事DDとはどのようなことを行うのか。ひとつには人事が影響する財務的な課題である。その代表的なものは、人件費(給与制度)と退職給付債務に関するものである。このDD内容は直ちに買収価格に反映されるべき問題となりうる。財務DDの一環として行われることも多い。
もうひとつが非財務的な課題である。これには従業員の年齢構成や労働組合問題、従業員のマインド・モチベーションなど、直ちに買収価格に影響されないものの、長期的な視点からは経営上きわめて重要な問題となっていくものが含まれている。
具体的にどのように人事DDを進めていくかは別な機会に譲るとしても、人事DDを行うに当たっての買い手としての心構えは、M&A成立の後において、人事的な課題は何があり、そのように対処していくかを、しっかりとイメージし、取りまとめておくことが必要である。
さらに海外、特にアジア地域に子会社を所有していることも増えており、買収対象会社のみならず、その海外子会社における人事・労務問題というのは国内法人における人事DDよりも注意しなければならないことが多い。言語・文化の違いからコミュニケーション不足に陥り、不必要なリスクを抱えてしまうこともある。国内法人のM&A同様に、社内関係部署のキーマンとのインタビュー、交渉は欠かせない。
海外の会社を直接買収するケースも少なからずあることから、M&Aにおいて今後、人事DDが重要性を増していくことは間違いなさそうだ。
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