2010年01月06日
今年は持株会社体制である大手上場会社の経営統合が予定されている。ひとつは新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合であり、もうひとつは、まだ具体的な内容は公表されていないが、非上場でありながら持株会社体制をとっているサントリーホールディングスとキリンホールディングスの経営統合である。
一般に企業が持株会社体制を採用する主な目的としては、
- グループ全体として最適な戦略立案・意思決定・投資が可能になる。
- 持株会社、各事業子会社とも役割が明確化し、事業責任が徹底される。
- 事業の買収や売却、再編などM&Aが容易になる。
などがある。
特に注目すべきは「M&Aの容易性」である。持株会社の場合、買収対象の株式を買うことや、株式交換を用いることで傘下に収めやすい。また、独立性もある程度は確保されるため買収される側の抵抗感も比較的少ない。しかしながら、買収の相手先が自社と同規模の会社であった場合や、同じような持株会社体制であった場合は統合プロセスが複雑化する傾向がある。
例えば、大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合を果たした「J.フロント リテイリング」では、2007年9月に両社の株式移転により、J.フロント リテイリングを設立した。さらに同年11月に松坂屋ホールディングスをJ.フロント リテイリングに吸収合併させて、現在の体制をほぼ固めた。
開示資料によると、新日本石油と新日鉱ホールディングスにおいてもJ.フロント リテイリング方式を踏襲し、株式移転で(統合)持株会社を設立し、統合・再編・整理を進めていく計画である。一方、キリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合については、様々なマスコミ報道がなされているが、具体的な情報はまだ開示されていない。
現在、持株会社体制を採用している上場会社は300社ほどある。当然のことながら、今後は持株会社同士の経営統合も増えてくることが考えられる。そのとき、持株会社同士で合併するのか、株式移転でさらに(統合)持株会社を設立するのか、経営統合にあたっては工夫が必要である。
未曾有の経済環境の下、独禁法の改正もあいまって、国際競争力の強化など、勝ち残るための巨大企業グループのM&Aが2010年の注目テーマになりそうだ。
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