2009年11月25日
会社法ではさまざまなM&A手法が認められており、従来からある合併、事業譲渡のほかに、株式交換、株式移転、会社分割などがある。特に会社分割には以下にみられる利用方法がある。
(1)現物出資の代替行為
(2)事業譲渡の代替行為
(3)合併の代替行為
まず、「現物出資」の場合は、資本充実の観点から、原則として裁判所が選任した検査役の調査が必要で、事業開始までに手間がかかるが、会社分割により資産を拠出して会社を新設する場合には検査役の調査は不要である。単独で資産を出して、会社を設立する、あるいは資産を出し合ってジョイントベンチャーで新たに会社を設立するとしても、会社分割が有利である。
次に、「事業譲渡」と比較して会社分割が有利な点として、第一に対価を自己の株式でできる(資金が不要である)ということ、第二に債権者の個々の同意がなくとも債務を移転できること、などメリットは多い。さらに売る側のメリットとして、会社分割では税制適格会社分割を行えば、課税が繰り延べられる。含み損益を顕在化させたい場合は別として、税制適格会社分割は税金のメリットは大きい。
最後に、「合併」と会社分割で大きく異なるのは、合併の場合は、会社をまるごと引き受けるのであるが、会社分割は会社の一部でも構わないという点である。つまり、必要な事業だけ切り出す、あるいは引き受けることが可能である。買収する会社が有する潜在的リスクを負いたくない場合には、移転する資産・負債、権利義務が限定できる会社分割にメリットがある。
上述の通り、いろいろな点で会社分割はメリットが多いが、いくつかの制約もある。例えば、株式交換では会社をそのまま傘下に収めるため、その会社が営んでいる事業は当然に継続できるが、会社分割の場合は継続できないことがある。会社分割で獲得した事業を継続するには、官公庁の個別の承認が必要なものや、許可が必要なものもあるため、事前に主務官庁の確認を取るなどの注意が必要になる。
とはいえ、会社分割は企業グループ内外の事業再編や企業再生など活用できる場面は多い。会社分割を上手に活用して事業拡大をぜひとも進めて欲しい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
-
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
-
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
-
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日