2009年09月09日
世間では「婚活」という言葉をよく聞くようになった。婚活とは結婚活動を省略した言葉で、中央大学文学部教授の山田昌弘氏とジャーナリストの白河桃子氏の共著である「「婚活」時代(ディスカヴァー携書)」で世に広まった。
婚活のハウツーについて、様々なところで取り上げられているが、(1)結婚にはっきりとした目的を持つ。(2)自分の求める異性像をはっきりさせる。(3)将来の自分のビジョンがはっきりしている。などが成功の秘訣とされている。婚活の成功には、自分自身を良く磨き、目的意識を明確にすることが重要になるようだ。
多少ニュアンスが異なるかもしれないが、同じことがM&Aの世界でもいえる。M&Aでは、まず重要なのが目的をはっきりさせることである。当事者同士の目的がかみ合わなければM&Aもうまくいかない。新しい会社をどんな会社にして、何に重点を置き、どう経営していくかを決めることが必要である。そのためには、当事者同士で意見を一致させておかなければならない。
次に重要なのは、事前の準備である。当該M&Aにおける問題点を事前に洗い出しておくことはもちろん、相手方がこのM&Aに何を求めているかを見極めることは、その後の交渉において優位に立てるカギとなる。たとえば、相手がシナジーに興味がありそうなら、取引後の売上高、利益はどうなるのか、それによって株価(時価総額)はどうなっていくのか、といった疑問に答えられる準備を怠ってはいけない。
自社の将来ビジョンを実現していく上で、交渉も重要なファクターとなる。M&Aは訴訟ではないので、一方が勝ち、もう一方が負けるというものではないが、自社にとって有利に取引をまとめることが交渉戦術の胆になる。当事者同士が協力し合って問題解決を一歩一歩進め、当事者全員が満足を得られることが必要ではあるものの、交渉の主導権を相手に渡すことは避けなければならない。主導権を握っていれば、交渉内容やペースをしっかりとコントロールでき、自社のビジョンの実現に向けて、必要な条件を獲得しやすくなるからだ。
M&Aに当たっては、婚活と同じように相手からの信頼を確保することが必要であるが、巧みな駆け引きが婚活以上に必要なのかもしれない。
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