2009年06月24日
今年の株主総会では昨年に比べ、株主提案が大幅に減少する見通しである。株主提案は、株主自身が会社(経営陣)に対して議案を提出するものであるが、昨年までは株式を大量に買い付けた投資ファンドが積極的に株主提案を提出してきた。ここで気になる点として、敵対的買収行為は悪いもの、その一方で、友好的なMBOは良いものというイメージが強かったが、はたしてそうだろうか。
「敵対的」となると悪いものだとする感情がある。わが国の文化的な傾向として「和」が重視されていることは、「日本人」であれば多くが理解できるところであろう。では本当に敵対的買収は悪なのか。敵対的かどうかは別として、M&A全般に言えることだが、買収者にとって魅力のある会社は、経営陣が替わることで企業のポテンシャルを引き出せる可能性がある。加えて、業界再編を加速させることが、結果的に業界の強化につながる可能性もある。
一方、MBO(マネジメント・バイアウト)は買収者と経営陣との間で、平和的に、友好的に行われるため、好意的にとらえられることが多い。しかし、レックス・ホールディングスの経営陣によるMBOが一部の個人株主から「不当に公開買付価格を低くした」として訴えられ、東京高裁において買い取り価格を引き上げる決定がなされた。レックス側が、最高裁に特別抗告したが、最高裁は今年5月29日に抗告を棄却する決定を下した。この決定により、少数株主の利益に配慮する流れから、安易なMBOには批判が強まる可能性は高い。
敵対的買収、MBOはM&Aの一つの側面であり、いずれも元々は良いものでも悪いものでもないが、善悪の基準がどこにあるのか。仮に良いものとするのであれば、誰にとってどのような条件かについて簡単に列挙したい。
(1)株主:中長期的なリターン(配当金や株価の上昇)が期待できるものであるか。
(2)経営陣:長期的な視野で、大胆な経営戦略をとっていけるものであるか。
(3)従業員:短期的な変動はあるものの、その会社で働き続けることが幸せと感じられるものであるか。
(4)取引先:長期的に良好な取引関係が継続できるよう、取引先の支持を受けられるものであるか。
(5)顧客:顧客離れが生じないよう、製商品・サービスの質が維持・向上されるものであるか。
上記(1)~(5)を満たすようなM&Aであれば、中長期的には多くの利害関係者にとって大きなメリットを与えるものと期待される。
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