企業防衛というと、投資ファンドと企業の攻防が、新聞報道やテレビニュースなどでしばしばクローズアップされ、話題を集めていた。古くはソトーや東京スタイル、最近ではアデランスやブルドックソースなどが有名である。


買収の対象となる会社の特徴としては、
(1)時価総額が、経営規模(売上高や利益、純資産など)や、同業他社に対して、相対的に低い。
(2)現預金や有価証券など事業に直接関係のない余剰資産を大量に保有している。
(3)これまでは規制に守られてきたが、規制緩和などで一気に業界地図に変化がみられる業界に属している。


などがあげられる。株主と経営者のベクトルが一致しているような会社では、そもそも買収の対象となることは少ない。一方で、株主と経営者の対話がなく、会社の将来に魅力がなければ株主もそっぽを向くので、このような会社は買収の危機である。


最近では様々な買収防衛策に走る会社が増えている一方、買収防衛策をとらない会社も多い。安易な買収防衛策を採用する会社がある中で、「会社は誰のものか?」という命題をあらためて考えることが必要であろう。


「株主価値の最大化」と言われていた、過去の行き過ぎた株主偏重主義、利益第一主義が破綻してしまった現在、会社のステークホルダーは、株主や経営者のみならず、広くは国や地域、取引先や顧客、従業員とその家族など、範囲を広げて認識されるケースが増えている。


会社が株主だけのものではないとするならば、企業防衛に当たっては、従業員や顧客、取引先との共同戦線をめぐらすことも重要である。買収者にとっても抜け殻になった会社を買いたいわけではない。有能な営業マンや研究者が流出すればそれだけでも企業価値を損ねる。また、主要顧客が買収に反対することで、買収者は顧客離れをおそれて、買収を取りやめる可能性もある。


したがって、企業防衛で重要なことは、買収者に隙を見せないこと。平時では資産効率の高い経営を行い、時価総額を高く維持すること。その一方で、有事に備えて従業員、顧客、取引先など味方を増やしていくことが最良の企業防衛になるといえる。

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