クロスボーダーM&Aにおける企業価値

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 真木 和久
歴史的な円高である。
対USドルに対しては円高傾向が続くとともに、欧州危機問題が収束しないことから、ユーロに対しても円高基調となっている。特にユーロについては、100円を割り込んだ状況が続いている(2012年1月16日現在)。
円高は、輸出企業にとってはマイナスとなるが、各社とも手をこまねいているわけではない。工場の海外移転や積極的なクロスボーダーM&Aを行う動きは、ますます加速するだろう。

私どもが行う業務の一つとして、「企業価値評価」がある。企業が、M&Aや出資等を行う際に、第三者に参考意見を求めることがある。具体的には、ターゲット企業について、会社が取引をする際の参考価格の算定を第三者に依頼する。その算定を私どもが行うということである。
このターゲット企業等が、最近、様変わりして来た。過去、グループ企業の再編等に係る案件が多くあったが、それに加えて、海外案件が増えて来たように思う。
海外案件の中でも、新興国、特に今後成長が期待されるアジア諸国が増えてくる可能性が高い。

クロスボーダーM&Aにおける企業価値評価であるが、国内会社のM&Aの場合と、方法論は変わらない。
たとえば、M&Aでよく利用される評価方式に、DCF方式(Discounted Cash Flow方式)というものがある。
DCF方式とは、当該企業が将来生み出すキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引くことにより、企業価値を測定する方式をいう。
その際、重要になるのが、将来キャッシュフローの確実性、割引率の2つである。
実際のM&Aの現場において、買い手企業の算定人は、ターゲット企業の作成した事業計画を分析し、企業評価上、必要な修正を行う。また、ターゲット企業の経営陣に対し、事業計画に関するインタビューを行う。
これらに加え、ターゲット企業が属する市場環境等の外部環境を分析した上で、算定人は、買い手企業に対し、企業価値評価の結果を報告する。
企業価値評価における、こういったプロセスは、国内企業であろうが、海外企業であろうが、本質的に、変わることはない。ただ、当然のことではあるが、ターゲット企業の属する市場や国家の制度面(法律・税務・会計等)に係る基本情報等は、押さえておかなければならない。
今後ますます増えてくるであろう、クロスボーダーM&Aについて、お役に立てる機会が増え、国内企業が元気になっていく姿を見てみたい。

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