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資本市場との対話の中核となるコーポレート・ストーリー

コーポレート・ストーリーは資本市場と上場会社の「約束」

2012年07月02日

柏崎 雅代

サマリー

◆上場企業は、自社が中長期的に目指す姿を資本市場に説明する務めがある。自社の目標とする投資リターンを明示し、それを達成するための戦略を、投資家が理解しやすいシナリオで示すものがコーポレート・ストーリーである。IRとは、自社の株式をなぜ買う(保有する)べきかについて投資家の観点から説明するマーケティング活動であり、コーポレート・ストーリーはIR活動の中核となるコンテンツである。

◆金融機関の政策保有(主に持ち合い)株式の売却を背景に、日本企業の株主構成は大きく変化した。上場企業にとっては、従来のような安定株主が減少しており、敵対株主リスクが高まっている。敵対株主リスクへの対応は、投資家(株主)の信任を高めることが第一であり、資本市場との関係の再構築が求められている。機関投資家のグローバルな投資先選定の中で、日本企業に対する評価は極めて厳しいのが現状である。

◆中期経営計画(中計)を公表している企業は多いが、資本市場が知りたい内容との間にずれが存在する。「コーポレート・ストーリー」として中計を見た場合、機関投資家が重視する要素であるROEの目標やキャッシュ・フローの配分に関する情報が圧倒的に不足している場合が多い。

◆コーポレート・ストーリー策定の基本プロセスは、企業理念、ビジョン、中計、各事業戦略といった社内の様々な素材から、資本市場の観点で訴求ポイントを抽出し、投資家の視点で整理した上で、投資家にとってわかりやすいシンプルなロジックに変換・翻訳してストーリー化することである。策定されたコーポレート・ストーリーは、IR活動を通じて資本市場に発信され、フィードバックを受けることで継続的に修正・進化させていくべきものである。

◆コーポレート・ストーリーを活用した資本市場との対話は、友好的な株主作りにつながるとともに、敵対株主の意見に対する経営者側の強力な論拠ともなり得る。資本市場の信任度を高め、適正な企業評価が形成されることで、いたずらに敵対株主の動向に左右されず、持続的な成長に向けた戦略の実行が可能となるのである。上場企業にとって、コーポレート・ストーリーを通じた資本市場との対話は、企業活動そのものと同等の重みをもつものである。

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