健康保険組合は赤字財政を脱却できるか?

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健康保険組合連合会は4月10日、平成21年度健保組合予算早期集計結果を公表した。平成21年度予算データの報告があった組合(1,304組合)の数値を基に、全組合(1,485組合:平成21年4月1日現在)の予算状況を推計したものである。


これによると、経常収支状況は、過去最大の赤字であった平成20年度予算(6,171億円)とほぼ同水準の6,152億円で2年連続の大幅赤字となる。赤字組合数は対前年度比26組合増加し、1,360組合となり、その割合は前年度約89%から約92%とさらに増加する。


収入面では、平均標準報酬月額は前年度予算値とほぼ同水準だが、経済状況の悪化に伴い平均標準賞与額が大きく減少(対前年度予算値▲9.47%)し、保険料率の平均が74.12‰(対前年度比+0.46‰)に引き上げられたが、保険料収入は0.72%減少し、6兆798億円にとどまる。報告があった組合のうち、保険料率が協会けんぽの平均料率(82‰)を超える組合は241組合で18.5%を占めている。


高齢者医療制度に係る納付金等の状況は、後期高齢者支援金が1兆2,723億円(+13.08%)、前期高齢者納付金が1兆1,065億円(+6.62%)、退職者給付拠出金が大幅減少したため、納付金等の負担総額は、2兆7,512億円となり、対前年度比▲2.42%と若干減少する。ただし、保険料収入に対する納付金等の割合は45.2%と健保財政に占める割合は大きく、50%以上となる組合も438組合で全体の3分の1に達している。


支出面では、保険給付費が3兆5,124億円(対前年度比+1.72%)、保健事業費は特定健診・保健指導等の実施に伴い増加が予想されたが3,981億円(+13億円)と微増にとどまった。


また、全国総合健康保険組合協議会によると、傘下の総合健保263組合のうち94%の247組合が赤字予算となり、平均保険料率は81.12‰(対前年度比+0.35‰)で、協会けんぽの平均料率(82‰)を超える組合は104組合で約4割、納付金等の割合も46.2%を占めており、単独・連合健保に比べて財政状況は一層厳しい。


このような状況の中、健康保険組合は赤字財政を脱却することができるだろうか? 保険料収入は、平成15年度からの総報酬制導入により安定していたが、経済の急激な悪化に伴い、各企業の新規採用の抑制、支払い賞与が減少していることから当面赤字を縮小する要因とはならない。(仮に保険料率の平均を協会けんぽの平均料率(82‰)並みに引き上げると赤字が解消するが現実的ではない・・・)


それでは、支出を圧縮できるだろうか?


保健事業費に関しては、組合健保の独自性を維持する上でも保健事業は重要な施策であり、たとえ見直しを図っても支出の6%弱にすぎないことから削減効果は薄い。保険給付費は健保財政の過半を占めており、被保険者および被扶養者の高齢化に伴い今後も逓増傾向が予想される。健保連および各組合健保がレセプト分析に基づいた重複受診のチェック、ジェネリック医薬品の普及など削減努力できる項目もあると思われるが限定的であろう。


平成20年度および21年度の赤字の最大要因は、高齢者医療制度に係る納付金等、とりわけ著しく増加する前期高齢者納付金である。これは母体企業・組合健保の努力範囲を超えるものであり、公費投入の是非、後期高齢者医療制度との一体化、そして健保の財政方式のあり方(積立方式等)も視野に入れた検討が喫緊の課題となっているのではないか。

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