不動産開発ブームに沸くフィリピン

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マニラ首都圏は今、不動産開発ブームの真っただ中にある。ビジネスの中心地マカティ市、同市に隣接するタギッグ市ボニファシオ地区、オルティガス地区などでは、オフィス向けの高層ビルやコンドミニアムなどの建設が次々と進められている。ビルが完成する前に完売となることも珍しくなく、不動産需要は急速に高まっているようだ。


フィリピンにおける不動産需要増の背景には、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業が急成長していることがある。フィリピンへは投資環境の改善も奏功し欧米企業からの業務委託が急増しており、その結果マニラ首都圏を中心にBPO向けのオフィスビルの需要が高まっている。またそれに伴い、首都圏でBPO業務に従事する地方出身者の住宅向け不動産需要も高まっているようだ。


さらに、海外就労者からの堅調な本国送金により購買力が高まり、現在の低金利も後押しし、マイホームを取得する人が増えていることも需要増の一因である。2012年1-10月期の送金額は、欧米の景気減速や中東の政情不安にもかかわらず前年同期比5.8%増の175億ドルとなり、通年で過去最高を記録した前年の201億ドルを上回る勢いだ。旺盛な国内消費に牽引され、2012年の7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比7.1%増とASEANで最高となるなど、フィリピン経済の好調ぶりが際立っている。


このような活発な不動産需要を追い風に、メガワールド社やアヤラ・ランド社など地場の不動産開発大手はいずれも不動産事業の業績が好調である。今後の開発計画にも意欲的だが、中でも要注目の開発地域が前述のボニファシオ地区(通称:ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC))である。BGCは米軍基地から民間企業に売却された再開発地区であり、高層ビルが立ち並びブランドショップや世界各国のレストランが軒を連ねている。2010年には最先端の医療施設が、今年5月にはイタリア高級車メーカーのランボルギーニの販売ルームも開設されたが、まだ多くの敷地が開発されずに残されたままだ。


メガワールドは、BGCに今後20年間で650億ペソ(約1,300億円)を投じ、住居やオフィス向けの高層ビル18棟の建設などの開発計画を発表。アヤラ・ランドも同地区に、300億ペソ(約600億円)を投じて63階建てのコンドミニアム棟や商業施設の建設を予定している。日本企業でも、オリックス株式会社が合弁で、BGCに66階建てのホテル・オフィス棟及び51階建てのコンドミニアム棟の建設を計画しており、まさに建設ラッシュである。今後BGCにも高級ホテルのシャングリラやグランドハイアットがオープン予定で、新興商業エリアとして一段と期待が高まりつつある。


ところで不動産開発には多額の開発資金が必要となるが、フィリピンでは銀行の不動産融資が2011年頃から急速に増加傾向にあり、2012年6月は前年同期比18.8%増の5,465億ペソ(約1兆930億円)となった(図表)。行き過ぎた融資や過剰なビル建設が不動産バブルにつながる懸念もあり、フィリピン中央銀行(BSP)は対策を検討し始めている。とはいうものの、空室率が低水準である現状からすると、概ね需要に裏付けられた開発である可能性が高いと考えられる。著しく好調なフィリピン経済をみるに、今後もしばらくは不動産開発ブームが続きそうだ。

図表 銀行の不動産融資の推移
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(注1)不動産融資伸び率は、前年同期比。
(注2)20%は、フィリピン中央銀行が定める総融資に占める不動産融資の比率の上限。
(出所)フィリピン中央銀行(BSP)より大和総研作成

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