2019年07月02日
サマリー
◆2019年6月5日、米国証券取引委員会(SEC)は、証券会社(ブローカー・ディーラー、以下BD)と投資アドバイザー(投資顧問会社)の行為基準を強化、明確化することなどを内容とする新規則や解釈指針を採択し、公表した。個人投資家が金融商品にアクセスすることや金融商品を選択できるようにすることを確保しつつ、投資家保護を強化することが目的とされている。
◆BDに対する新規制である「最善の利益規則」(Regulation Best Interest)は、証券取引や証券に関わる投資戦略の推奨をするBDに対して、顧客の最善の利益のために行動することを義務付けるものであり、現状BDに適用されている適合性原則が強化されたものといわれている。ただし、投資アドバイザーに課されているいわゆるフィデューシャリー・デューティーが課されるわけではない。
◆最善の利益規則では「最善の利益」について、「自己の利益を顧客の利益よりも優先させてはならない」ということ以上の具体的な内容については定義していない。実質的に、いわゆるプリンシプルベースの規制を採用したものといえよう。今後、各金融機関は最善の利益規則を順守するための方針や手続きを策定、維持、実施していく必要がある。
◆何が最善の利益なのかについては、金融機関の対応とそれに対するSECやFINRA(米国金融取引業規制機構)による判断や執行の積み重ねにより徐々に明らかになっていくものと思われる。その意味では、投資家保護や投資アドバイスの質の向上と投資家の金融商品選択・アクセス確保のバランスがどのように図られるのか、米国金融機関の取組みと当局の対応を注視する必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
日米で共通する株主提案・議決権助言の課題
米国BRTが株主提案権と議決権行使助言業に関連する制度改正を提言
2025年05月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日